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「On your mark(位置について)」
その言葉が誰かの口から発せられ、一気に緊張が会場を駆け回る。
勝って、テレビ局への復讐を試みる俺は、その緊張に呑み込まれて倒れこんでしまいそうになったが、なんとか持ちこたえた。
焦るな、俺。集中しろ。この大会に向けて毎日何時間も練習してきたんだ。いつも通りのことをやれば、きっと勝てる。
「Set(用意)」
スタートが近づいてきている。そう考えると、頭が真っ白になった。
いい。何も考えなくていい。ただただ走ればいいんだ。
「Go!(ドン!)」
その合図と同時に、俺は思いっきりスターティングブロックを蹴って、勢いよく走り出した。
そこから加速。他の選手達とぐんぐん差をつけていく。
独走状態だ。観客からは、一年前とは違い歓声があがっている。フライングもしていない。完全な勝利だ。
見たか、テレビ局! もう俺をからかうことなどできないだろう! この事実を報道するがいい! 俺は、今や笑い者なんかじゃない!
俺は、そのまま会場を出て行き、テレビ局の方へ走っていった。
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