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森の中にある小さな泉は、とても静かだった。 木々の寝静まるような場所で、アトリとホークはゆっくりと抱き合っていた。 初めて体を重ねたときは、なし崩しに愛し合ってしまったが、改めてゆっくりとアトリの肌を撫でると、その柔らかさに言葉を失わずにはいられなかった。 「あっ、やだあ、なんでアトリのお尻もみもみするの?」 「ああ、そうだな、もうちょっと」 ホークは焼きあがったパンの柔らかさを思い出しながら、アトリの尻を触り続けた。性欲とはまた別の触り心地があった。触り続けていると、だんだんとアトリの感覚が敏感になってきたらしく、甘い吐息が混ざってくる。 「んっ、あっ、あっ、そこ、や」 「ここか?」 「んんっ」 奥のすぼまりに向かってぐっと押し上げるように揉むと、じん、とした愉悦を感じてアトリが身をよじる。可愛らしい奥に舌を這わせると、甲高い声が上がる。 「ああ!そ、そんなとこ!」 「どうしてだ?アトリは全部かわいいのに」 尻を上向かせるように両手でつかみ、広げるようにすると、奥を震わせてアトリは近くの草にしがみつく。背後から覆いかぶさるホークの、熱い、太い塊を感じて、気恥ずかしさとこれから味わう官能にふるふる、と下半身がわななく。 たかぶりで涙さえ浮かべているアトリが、ひな鳥のようにさえみえて、ホークは愛しさと欲望がごちゃ混ぜになってくらくらしそうだった。こんなにも穢れのない存在が、今から固いもので奥まで押し広げられ、敏感な場所を何度も突かれ、高ぶりの出口までむかおうと言うのだ。ほかでもないホーク自身の手で。 口の中になぜかあふれてきたよだれを、ホークはごくと飲み込んだ。アトリの柔らかくてすべすべした肌に歯を立ててしまいたかった。 「いいか?」 窄まりに当てながら、耳元でささやく。耳を噛んでしまいたいのを必死で抑えていた。 アトリの顔が背後のホークを振り返る。唇が触れ合いそうな距離だった。 「きて。アトリ、ホークのことぎゅっとしたいの」 ちりちりとこめかみの奥で何かがはじけそうだった。 「あっ・・・・・ああ―――ッ」 余裕がほとんどなかったが、できるだけゆっくりと挿入する。久しぶりの体にきついだろうとわかっているのに、腰を止めることはできなかった。気遣いながらも、最奥まで中を埋め尽くされたアトリは、ふっくらとして小ぶりの花芯からぱた、と精液を吐き出した。 ふう、ふうと肩で息をしながら、アトリはぎゅっと奥まで入ってきたホークを食い締める。眉根を寄せてぐっとこらえながら、ホークは動くのを我慢していた。耳朶が熱っぽくかまれて、アトリから子犬のような声が漏れる。 「すまない、我慢が出来なくて」 あ、あ、とアトリは小さく声を漏らさずにはいられなかった。ホークのものが、アトリのどうしようもない場所にずっとふれているのだ。奥のところの、なにかが湧き上がってくる感覚の場所が押されていて、ちょっとでも動かれたらアトリは自分がどうなってしまうかわからなかった。 「動くぞ」 「ん、あああっ」 ずる、と奥から抜けていく感覚に背筋が泡立つ。ぞくぞくとする体を抑えるかのように、ホークの太い指が腰をぐっとつかむ。 「っく」 「はああっん」 抜けたと思ったら、今度はまた入ってくる。 挿入した時よりも、打ち付けるような速い動きにアトリは翻弄されていた。 「ああっ、ああっ、あっあっ、やっ、きもち、気持ちいい」 挿入は次第に早くなり、肌と肌が触れ合う音がする。入っては出てを繰り返す動作が、結合部からくちゅくちゅという水音を立て、恥ずかしくてアトリは自分の指を噛む。 「アトリ、噛むなら俺を噛め」 優しいホークの手が下りてきて、アトリの口から指を抜かせる。そうしながらも腰は止まることなく、アトリはゆすぶられながら代わりに差し出されたホークの親指を噛んだ。ホークの左の手のひらが、枕のようにアトリの頬の下に差し込まれる。 「んっ、あうん、あっあっあっあっ」 奥をつかれるとたまらなかった。何かがじんじんとアトリの体に湧き上がって、足の指に力が入らなくなる。崩れ落ちそうな尻はホークによって支えられていた。 「アトリ、アトリっ」 パンパンパンと性急な腰つきになり、中を穿つような深いものになる。腰の動きがはっきりと変わって、アトリは思わず挿入を止めようとぎゅっと中に力を入れた。 「ああああんっ」 けれどアトリのやり方はうまくいかずに、自分の敏感なところをより強くホークの熱く太いものでこすり上げられた。血管まで感じるほどみっちりと締めたそこを、変わらずぬっと押し入れられる。息も絶え絶えで受け入れたと思ったら、今度は張ったえらが中の敏感な壁すべてをそぐかのようにゆっくりと引き抜かれる。 「あ・・・・・・・っ」 それに声を上げる間もなく、奥にまた入り込む。 「きゃっあああああっ!はあっはっ、あっああっ」 「はあっっく」 奥まで穿つと、ホークはびくびくと震える先をアトリの一番さらに奥に押し付けるような腰をせずにはいられなかった。深く、奥に当たる柔らかいアトリの唇のようなところが、先端に甘くキスしてくれるのだ。射精が近づくにつれて、アトリの奥に深く入り込んで、そこに口づけてほしかった。 奥に腰を進ませると、引かずにダメもとのようにさらに押し付けてのの字を書くように腰をねっとりと刻み込む。アトリの最奥はそんなホークの先を答えるようにちゅうっと吸い付いてくれる。 引くと出ていかないでというように締め、入ろうとすると抱き着いてくるようだった。 ホークは涙が出そうだった。 人と肌を重ねて、こんなにも抱きしめられている心地を味わったことがなかった。 やがて喘ぎ声よりも、荒い二人の息が森の水辺に響く。 ホークがアトリの片足を持ち上げ、奥にぐっと入り込んだままじれったくぐずぐずとした心地を味わいながら、アトリの唇にむしゃぶりつく。 アトリも親指からホークの舌に咥えるものを変えて、夢中で抱きしめあって、触れ合う。 言葉では形容できないような濃厚で甘い官能を感じている結合部はしっとりと濡れていて、キスを交わしながらホークがゆっくりと正常位に体を動かしても、くちゅ、くちゅ、としどけない音を立ててびくびくと震えるような快感をアトリにもたらした。 気が付けばホークの顔ごしに夜空の月が見えていて、きれいとさえアトリは思った。 はあ、はあ、と夢中でキスをしていた二人は、いまから激しく求めあうことをお互いがなんとなくわかっていた。ホークはもはや、いいかという了承の言葉を口にする余裕さえなかったし、アトリもきてという言葉を口にするよりも、ホークが好きで大好きで世界で一番ぎゅっとしたい以上のことは考えられなかった。 アトリに自由をくれたホーク。 いや、アトリは本当は自由だと、何にも縛られたりしていないんだと教えてくれたホーク。 アトリは愛しくて仕方がなかった。 ずん、とホークの腰が奥に打ち付けられる。 ぎゅっと首元に抱き着く。 「んうっ、んっ、んっんっ」 抱きしめるようにホークの手がアトリの尻に回される。 深く打ち込まれると、まるで外からも中のものにアトリの体を押し付けるかのようにぐっとホークの手が尻たぶを強く揉みしだく。 その強さにも感じてしまって、アトリはしがみついて揺さぶられるのに必死だった。 「アトリ、はあっ、愛している」 「っん、あっあっあっあっ、アトリ、もっ、あんっあんっああっ」 ホークの腰が速くなる。 アトリはもう意味のある声は出せなかった。 体の奥にホークが触れるたびに、深くて重い何かがお腹の奥から湧き上がってきて、息つく間もなく熱さや固さ、太さを感じて腰がいやらしく動く。 深く、互いを食い締める動きが激しくなる。 性急に小刻みになる動きに、アトリも震えずにはいられなかった。 「ああっああっ」 出口が見えてきていた。 ホークがさらに深く抱きしめてくれたので、アトリもホークを抱きしめた。そうすることで体が高ぶりに向かって登らされてしまう快感から逃げられなくなることなど、アトリにはわからなかった。ホークはそんなアトリに一瞬罪悪感を感じたが、それよりも何もわからないアトリをぐずぐずにしてしまって、逃げ出せないくらいにきつくのしかかって抱きしめて、忘れられないくらい深く快感に落としてやりたいという、雄としての気持ちの方が強かった。 官能がどこにあるのか、お互いはっきりとわかっていた。 「っアトリ!」 「あああああああっ」 ず、ぐんと一番深く、早く押し付けられて、アトリの中の膨らんだそこがびくびくと痙攣し、全身に快感がいきわたる。揺さぶられるままにぴこぴこと振れていたアトリのものから、とろ、っと薄い性が吐き出された。びくびくびくとわななく体といっしょに震えるそこからは、ゆっくりとした射精がとまらなかった。 体の一番深くでホークのものはびゅるる、と吐きだされ、その感覚さえ感じてしまっていた。重いものを吐き出すような感覚にホークは脳が沸騰しそうになりながら、しゃぶりついてくるアトリのそこになんどもなんども腰を押し付けて、一滴でも深くアトリの奥に吐き出した。 はあ、はあ、と荒い息から、また二人の深いキスが始まる。 ホークは自分のために命を投げ出そうと決めていた小さな小鳥の鼓動を、体ごと深く抱きしめたかった。どこまでも優しくて、小さくて暖かい鼓動と、自分の荒々しい鼓動をいっそのこと重ねてしまいたかった。 湧き上がる感覚に、若い二人はあらがえなかった。 緩慢な、こすり合わせるような動きをどちらともなく繰り返すうちに、それは深い動きになり、しっとりとした二人の肌がさらに湿り気を帯びる。 ぽっかりと泉の周りに開いた夜空から、月が全く見えなくなるまで、果てては再びむさぼり合うことをやめずにはいられなかった。 疲れ切ったアトリを泉で清め、洞窟の寝床に抱えて戻ってきて寝かせると、ホークの胸には信じがたいほどの充足感があった。 それは雄としてのものだとはっきりと感じさえした。 うとうととあどけない表情をしているアトリの前髪を指でつまみながら見ていると、アトリの柔らかい指がホークの頬をそっとなぞる。 「ホーク・・・あのね、アトリ、てんびんにアトリにできる、ぜんぶをのせるね」 檳榔売りにだけ、天秤の信仰が残っているのだろうというマゲイの言葉を思い出し、ホークは夢に旅立とうとしているアトリの額にキスをしながら訪ねた。 「反対側には何が載っているんだ?」 「はねだよ」 「羽?」 「うん・・・」 とろとろとアトリはホークの頬を指の腹でいじる。 目はほとんど開いていなかった。 「ほーくのこと、まもってあげる、はねがほしいんだ」 「アトリ、お前は」 ホークは愛しさが強すぎて、形のないはずのそれの輪郭さえ見えるような気がした。 「いつも俺を守ってくれるんだな。まるで天使さまだな」 ちゅ、という鳥のついばむようなキスに、もう夢の世界へ行ってしまったアトリは、くすと笑った。むにむにした柔らかいほっぺが布に擦れるさまや、寝息で規則正しく胸が上下するさまなど、ホークはとにかくそういうものをいつまでも見つめていたかった。 「・・・・・ほーく、がんばってるの、あとり、すき・・・だよ・・・・」
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