聖なる日の使者

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 【100年前】  年内最後の月、12ノ月になった。  この月の中では、年終えの日、と共に、もう1つ……「聖なる日」がある。国民の間では「クリスマス」と呼ばれている、大切な祝日だ。  この聖なる日だけ、雪が降り積もり、白銀の世界となる……それが、ノーファ国の魅力。毎年、この季節だけは楽しみでもあった。  それも、去年までのことだが。  (で……何で俺が、聖なる日の使者になってんだ?)  机の前に紙を投げ出し、椅子の背にもたれて天井を仰ぐ。  キッチリと片付けられた……という言葉を添えるには、程遠い机上。山となった書類や書物が溢れ、羽ペンなども入口からは見えない状態になっている。  紙には、魔法で印字された書体で、簡潔に文章が書かれている。 【警護部ノ長 アルスラー・マーフェル殿】  貴方を、今年度の「聖なる日の使者」に任命致します。  国民および魔法使い達が欲す物を記した書類を送ります。各々が望む物を、漏れなく送ってください。  報奨金は、全て送り終えてからとなります。以上。 【国政部ノ長 トアーリン・ファリス】  (トアの野郎……)  トアーリン・ファリス……自分の同期かつスペルアでの上司だ。自ら国政部を志願して昇進し、そのまま長、いわゆる国王になってしまった腐れ縁。  スペルアには、トップ10の魔法使いが自動的に入れられ、その中で国政部に入る5人を決める。それは志願制で、強制ではない。  当時、魔法使いとしての力が2番目に強かったトアーリンと、1番強かった自分、アルスラーは、国政部に行くと噂されていた。  だが自分は、昔から憧れていた警護部に入りたくて、わざと今の立場を選んだのだ。後悔はしていないが、こうしてトアーリンに無理矢理何かをやらされることもあり、辟易していた。
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