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「なるほどな。」
ファルージュの第一声はそれだった。
フェルエナードのこと、リュシャのこと……魔法使いだからこそ、理解出来ない国民の考えが、ずっと自分の中で渦巻いている。
「アル、それはな……心だ。」
「はい? 心?」
ファルージュが、頷く。
「人に貰った物は、一生涯の宝物になる。この国民の考えが同じ物を量産出来る魔法使いと違うのは、心を込めて手作りする、という点だ。買った物、貰った物は、誰かが心を込めて作った、そして使った、たった1つしか無い物となる。そういうものなんだ。」
そして、と言ったファルージュが、足を組み替える。
「俺達のように、何百年と生きるのが普通の魔法使いと違って、国民には寿命というものがある。それも、数十年という短い短い時間。それは、例え病気を治したところで変わらない。だからこそ、その寿命まで好きに楽しく生きたい、という気持ちが出てくるんだ。」
ようやく分かった気がした。
自分達とは違う視点からの、欲しい物に対する理由……それは、自分達よりも遥かに遥かに短い人生の中で、後悔したくないからなのだ。
魔法使いが聖なる日の使者になる理由が、ようやく分かった気がした。
「じゃあ……俺達スペルアの魔法使いが、わざわざ毎年聖なる日の使者をやるのは……」
ファルージュが微笑んで頷いた。
「そういうことだ。ノーファ国の欠点は、国民の気持ちそのものを、境遇的に理解出来ない魔法使いが、国政を担っているところにある。だからこそ、国民と自分達の違いを上層部が知らないといけないんだ。」
黙って頷くと、ファルージュがさらに続ける。
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