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昔から続く想いと言葉
○○年○月○日とカタカタとキーボードで刻む。
監視カメラの映像に囲まれながら私はあのお兄さんの出生届を作っている。
これから始まるこの世界の人生、彼はどんな道を歩くのだろうか。
それと同時に彼の生前の記録を見る。
「トラウマは飛行機……空港か。あのときは色々とあったわね」
ルカが来た頃を思い出す。
あの子は小さいながらも強い意思でご両親とは別の道を選んだ。
何度も後悔はしないかと説得したが、ルカはここに残った。
小学生ながらにして自分の人生を決めた彼を私はこれから応援しようと強く思ったのだ。
その応援したい感情は暴走するくらいとんでもない愛情に変わってしまったんだけどねと私はふっと微笑む。
「君にこの言葉を贈ろう」
「言葉?」
「うん、おめでとう」
「おめでとう……?」
「君はここで続きを生きることになったんだ。おめでとうはこの世界で一番大切な言葉なんだよ。君がもし、そのお兄さんを迎えたらまず最初におめでとうって贈りな」
ルカはあの言葉を自分の口で贈っているのだろうか。
昔から繋がれていくその言葉の重みを感じながら私は書類を進めた。
「おめでとう。君の続きは私が管理することにした」
これから始まる人生に、魂たちにどうか祝福を……。
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