境目の監視者、早瀬美穂の秘密

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境目の監視者、早瀬美穂の秘密

 あの世とこの世の境目は色々とある。  有名なのは三途の川、あとは階段とか踏切とかあらゆるものが境目として存在している。  今日も私はこの世で命を終えた魂たちがあの世に向かうのを待っている。  たくさんの監視カメラの映像に囲まれ、カメラに酔いながらも眺めていた。  しばらくしていると電話が鳴ってきたので受話器を取ると迎えに来てほしいという要請が入る。  自力で行く者もいれば、流れついたように何らかの力で運ばれる者もいる。  ヘルプミー、保護が必要という状況なんだな。 「ほうほう、若い男か……」  また電話がかかってきた。  迎えの要請に協力者がやってくるという。 「久しぶりだな。あの小さな子が今は立派な大人か」  この世で地震やら事故やらでたくさんの人が境目を乗り越えてあの世に来ることがある。  私が世話したあの坊やはとある事故で渡ってきたが両親と別れて自らこの境目に残ると主張した。  向こう側に行くよう説得してみたが、この世に残してきた兄が心配で行けないとのこと。  職員全員で話し合いをした結果、師匠に坊やを預けて立派な死神になるよう手配した。  あの坊やが今後どうなるのか気になった私は時々、師匠の家を訪れて様子を見に行っていた。  独立してから会うのは今日が初めてで少しだけ緊張する。 「久しぶりです。美穂さん」  現場は波打ち際、キラキラと光る美しい海。そういや最近海で遊んでねえなと思いながら歩くと協力者に出会う。 「成長したわね、晴樹くん……いや、ルーカスくん」 「美穂さんは変わらないですね。あの時と同じ……綺麗なままですね」  出会った頃より爽やかさが増す笑み、細身だが意外と筋肉質なルカくん。  ああ、なんて可愛いのだろうと私は思わず目がハートになりそう……だけど仕事は頑張らないとね。今日も元気に頑張るぞとかっこ良く締めるつもりだったけど、やはり親バカや弟バカの血が出てしまったのかついキュンキュンと騒ぐ結果に……。 「もー小さい頃はとても可愛かったのにどうしてイケメンになったのさー! 今もいいけど、やっぱり昔の方がいいー! あー、でもねやっぱり困ってる表情は昔から変わらないね! すごく可愛いからいっかー! ルカきゅん可愛いー」  こうして発情していたらとても幸せな状態で、テレビの電源を切ったようにブチっと意識を失った。
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