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「紹介するわ、恵梨ちゃん。この人は1500m走を専門にしている丸山さんよ。高校時代には県大会で優勝した経験もあるのよ」
「また凄い人を連れてきましたね……」
丸山さんが「どうも」と軽く会釈をする。そんな凄い人なのにこれから面倒な実証実験に付き合わされるなんてお気の毒に、と心の中で同情する。
「丸山さんがここから駅まで5分で走れたら充分可能性はあるということでいいわよね?」
「いや、わたしに許可を求められても……。ていうかそもそも丸山さんは県内トップレベルで速いわけで、そこと比較されても彼氏さんが可哀想な気が――」
「浮気されているかもしれないわたしは可哀想じゃないっていうわけ?」
話の途中なのにムッとした表情で美愛さんがこちらを睨みつけてきたから、これ以上続けるのはやめた。
とりあえずこのアンフェアなアリバイ立証方法を黙って見守ることにした。明日も仕事だし早く帰りたいな、と心の中で呟きながら。
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