アリバイを覆せ!

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職場の先輩の美愛(みあ)さんに相談があるからと言われてオシャレな喫茶店に来たのはいいけど、その話の内容は少しお店の雰囲気とは合わない気がした。 自分が聞いたことが合っているのか、念のために美愛さんが話した内容を確認する。 「えっと……。つまり、美愛さんは彼氏さんの浮気のアリバイを覆すためにここから駅前まで全力で走って確認したいってことですよね?」 「ええ、そうよ! 先週のデートのときにわたしと一緒にここで話をしていたのだけれど、突然彼が用事ができたと言ったから、21時15分にここで解散したのよ。そして駅前で友達から、彼が他の女の人と抱き合っていたところを見たと連絡がきたのが21時20分。だけど彼はそんなに早くは走れないと言って否定したの! こんなひどい話ってある? 彼は学生時代陸上部だったんだからそのくらい速く走れるに決まってるわ!」 「専門は1500mとかですか?」 「ううん、砲丸投げ」 「砲丸投げ?」 「ええ、そうよ。力強いフォームがとてもかっこよかったわ」 「そうですか……」 あまり砲丸投げと長距離を速く走れることに関連性はなさそうだけど、いちいち突っ込んでいくと話が長くなりそうだから一旦置いておく。
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