アリバイを覆せ!

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「ああ、もう万策尽きたわ」 結局丸山さんも井川先生も帰り、夜の喫茶店内には美愛さんとわたししかお客さんはいなかった。チラリと時計を見るとすでに時刻はすでに21時30分になっていた。 「もうそろそろ帰ります?」 「結局何の成果も得られなかったじゃないの……」 美愛さんがため息混じりにぼやいたのとほとんど同時に美愛さんのスマホから“ピロン”とメッセージが入ったことを告げる音がした。 「何よ、こんな時間に……、ってまたなの!!」 「え、どうしたんですか――」 「駅前でまた彼と知らない女がいちゃついているらしいのよ!! ごめん、お金は立て替えといて!!!」 美愛さんは食い気味でそう告げると、我を忘れて走り出した。 「え、ちょっと……」 そんな困惑の声は、わき目もふらずに喫茶店を飛び出した美愛さんには届いていなかった。
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