つるぎの少女

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「はぁはぁはぁ…」  前のめりに崩れ倒れたレンバルは、酸欠に喘ぐ魚のように荒い呼吸を繰り返している。  その腕っ節の強さを鼻にかけ、日頃から傲慢で悪態をつく人間だった。  それゆえ、町の人たちからは、今の悲惨な立場に同情されてはいない。 「消えただと? そんな馬鹿なことが―」  鈍痛に呻くレンバルが苦し紛れに言った言葉が、意識とともにか細く消えていった。  サリア王国の騎士団を辞めてからも、漠地の荷揚げ労働で巨軀を鍛えていたレンバルを難なく倒した少女。  名をクンクハル・ラオコンという。呼び名はクゥ。齢十七になる。  彼女は西端の小国〈イフリヤ〉という故郷を旅立ち、東端の王国サリアのさらにその先に広がる異域、夷蛮の地と呼ばれる〈ボスフィラ〉を目指し、旅をしていた。  少女クンクハルは軽く頬をかいて、木刀を砂塵の降り積もった砂地に突き刺した。 「刀技終了」  クンクハルは、微かな声で呪文のように唱えた。
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