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砂漠の都市
彼女の故郷〈イフリヤ〉は、西方〈ランダルファ〉諸国に乱立する七つの小国の一つで〈ランダルファ〉の西端にある。
五十日以上の月日をかけ、途中、山越えや寄り道をしながら黙々と歩き続けた。
初めての長旅は、少女の肉体と精神を逞しく成長させる。
強志を胸に秘めるクンクハルは、念願だった目的地。その通過点である町サンタフルに足を踏み入れた。
現在、滞在しているのは、ラコティス砂漠を抜けた場所にあるサンタフルという砂漠の交易都市。
斜陽の国といわれるサリア王国の辺境と異域の狭間にある。
人口2万人ほどを有するサンタフルの町は、夷蛮の地〈ボスフィラ〉から見ると西方隊商交路の玄関口であり、辺境と異域をまたがり東西南北を結ぶ交易の回廊中継地として戦略的にも重要な位置をしめている。
砂岩造りの城壁に囲まれたサンタフルにあるのは、砂漠特有の乾燥した日照り。たびたび砂を巻きあげる強風と砂嵐。
それと見栄えのしない機能性重視の素朴な建物の群れ。
日干し煉瓦で建てられた家の天井は、ところどころ手抜き工事のように穴があり、屋内からは空が見えている。雨が降らないため、天井は後回しになっているケースが多い。
町を南北に横断するのは、申し訳程度に地面に埋められ街路として整えられた白石の街道。
その不揃いな白石の上を、人と荷物を背負い運搬している駱駝隊の列が人をかき分けながら、のろのろと行進して行く。表通りを行き交う人々は喧しく活気がある。
(疲れたので、早めに旅籠で休もうかな)
旅の途中から潤いがなくなり、カサカサの乾燥肌になったクンクハルの手には、✖️マークが記入された町の地図が握られていた。
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