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 総務からの移動日、佐高了はプライベートオフィスの磨りガラス扉を厳かにノックした。  中から出てきたのは、グリーンヘーゼルの瞳に虹彩と同じ薄茶の髪色をしたそこはかとなく西海岸線の風を匂わせる人物だった。七対三で分け目を作り、少ない方を後ろに流しているので角度によってちらつく額が超絶セクシーだ。  街でこの人物を見かけたら、外国映画か何かの撮影だろうと確実にクルーとカメラを探してしまうだろう。  歳は見たところ三十代前半くらいだろうか。  視線が合わさったらぎゅっと目が細まり、薄い唇は綺麗な三日月型になった。完璧な笑顔。スーツの薄いグレーが柔和そうな雰囲気とよく合っていて、佇まいとシルエットの端麗さに思わず了はわあ、と圧倒された。  相手がいくらストレートだろうと、この造形によこしまな思いを抱くなという方が難しい。了はゲイだけれど、そうでないとしても百人中九十九人くらいがこの必殺スマイルを見せられたら一旦呆けてしまうだろう。  しかし相手はこれから三ヶ月先直属の上司になることを思い出し、顔を引き締める。  了は身構え、昨日必死に覚えてきた英語を並べる。 「は、ハロー。マイネームイズ…」
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