第6話 異変

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第6話 異変

あまり目立つことは避けたいので 移動魔法は行使せず徒歩で向かうことにするが ここからエビル山脈までは馬車を使って2日ほどかかるようなので 身体強化魔法を脚に使用し 移動強化を施し、エビル山脈へとむかう。 エビル山脈の山麓の村『リトルガーディの村』がエビル山脈に通ずる道の最後の村のようだ。 山脈を越えた先にアイスランディア王国へ行けるようなのだが。 誰もエビル山脈からアイスランディア王国に向かうものがおらず 理由として険しすぎる山道と冒険者Dランク以上のパーティーでしか侵入できない程に 数多くの中位モンスターが生息していること。 また、未だエビル山脈の魔物調査が行き届いておらず 高位モンスターにいつ遭遇するかわからないため 険しい山道と遭遇戦が重なった時に 高ランクパーティーですら命を落とす可能性がある。 リトルガーディの村が見えてきた頃 大柄で大きな盾を背負っていて鉄の防具で固めたタンク風のスキンヘッドの男 魔物の皮で作られた軽防具の剣士風の男 同じく魔物の皮で作られた軽防具の武闘家風の女 ローブを身にまとい木の杖を持っている魔女風の女 のパーティーが目の前を歩いている。 スピードを緩めてそのパーティーの横を通り過ぎようとすると 剣士風の男に声をかけられ 「おいそこの冒険者。」 「どこへ行くんだ!」 リトルガーディの村に用事があると伝えると タンク風のスキンヘッドの男が 「あの辺鄙な村に何かあったか?」と周りのパーティーメンバーに声をかける。 なんにもないんじゃね?みたいな感じになり 怪訝そうな顔でこちらを見てくるので リトルガーディに古い友人がいて会いに行くんだ。 と伝えると 剣士風の男が 「エビル山脈には近づくなよ?」 「今ファストの街の冒険者ギルドのクエストでゴブリン部隊の中隊の撃破依頼があるんだが」 「俺たち様子を見に行ってきたんだが」 「ゴブリンキングがいたことから中隊じゃないあれは。」 「こちらに進んできている様子はないが早く高ランクパーティーで編成してレイドになるから。」 「古い友人にあったらその友人と早めに離れることをオススメするよ。」 それじゃあと行って剣士風の男のパーティー達は足早にファストへと向かっていった。 あの男たちの話は多分嘘ではないな。 あの感じだとリトルガーディの村には伝えていないことから 無駄なパニックを避けて 迅速な対応で撃破しようとしているのでは無いかと仮説は立てれる。 異世界転生マンガあるあるのウザ絡みをされるかとヒヤヒヤした案外良い奴だったな。 そのままリトルガーディの村に大急ぎで向かう。 ほどなくしてリトルガーディの村に着いた。 とても小さな村で 村の真ん中に教会があり 周りは民家とあまり整備されてない小石を含んだ土の道。 民家は茅葺き屋根で土壁で施された家のようで 力のあるモンスターに攻撃されたら直ぐに崩れそうなボロボロ具合。 とてもエビル山脈に通ずる村とは思えない。 教会はレンガ造りでしっかりしているように見えるが 所々朽ち果てておりここに人がいて大丈夫なのかと素人ながらに感じてしまうほどだ。 リトルガーディの村に入り 教会を横目に奥へと入っていくと エビル山脈に通ずる道が奥に見える。 エビル山脈に向かおうとすると 杖を持ったいかにも長老のようなおじいさんが近づいてくる。 「冒険者殿、少し待ってくだされ。」 と杖をつきながらよたよたと歩いてくる。 「冒険者殿、この先はエビル山脈ですぞ。」 「少し前に入っていったCランクの冒険者殿達が血相を変えてファストの街へと走って行ったのを見たのですが」 「エビル山脈でなにか異変が起きているようなので」 「おひとりで行くことはおすすめ出来ない。」 と長老のような男に呼び止められる。 長老にエビル山脈のモンスター調査をファストの街のギルド長に頼まれている。 訳あってギルドカードは見せれないが 危険だと思えば直ぐに戻ると伝え 空を飛ぶところを見せる。 長老は口をぽかんと開け 「冒険者殿はもしや王国直属の部隊とかですか?」 いや、ギルド長と深い仲だと行ったら なにかブツブツと言った後に 信用したのか 「危険だと思ったらすぐに帰ってくるんですよ!!」 と言われ 危険だと思ったら私も直ぐにファストの街へ報告しに行くと長老に告げる。 長老に別れを告げ エビル山脈へと向かう。 村を離れて数キロ過ぎると強く霧がかかり辺りの木さえ見えにくい。 魔力感知を使い 敵意を持ったものがいないか反応を確かめる。 反応はちらほら。 しかしこちらに向かってくる気配がない。 なにかに怯えているようだ。 エビル山脈までは一本道なのかずっと突き進んでいく。 少し行くと洞窟が見える また敵反応はこちらをじっと見ているのか 洞窟の中をじっと見ているのか分からないが 奥になにかあるかのような目線を感じる。 洞窟に向けて魔力感知をかける。 無数に散らばる敵反応を示す赤の点。 しかし無数に散らばる点は次第に集まっていきこちらへと向かってきているようだ。 飛行魔法で森の中で一番高い木を抜けるくらいの位置まで飛行魔法で1度飛ぶ。 少しすると ドドドと地鳴りのような音がしたかと思うと赤の点が重なり合って大きな反応として表示される。 その後ろに単体で大きな反応が群がる無数の赤い点に向かっているようだ。 このままこれを見逃すと リトルガーディにモンスターたちがなだれ込む可能性があるため 土魔法のアースウォールで洞窟入口を塞ぎ モンスター達の進行を止める。 聞きなれない魔物たちの鳴き声がしたと思えば 密閉しているはずの洞窟から魔物たちとそれぞれの断末魔となにか大きななにかを振っている風切り音が聞こえてくる。 風きり音が次第に近くなっていき 音がピタリと止んだ。 次の瞬間 アースウォールがピキピキとひび割れていくと同時に 轟音が鳴り響く。 3度轟音が鳴り響いたあと、アースウォールが完全に崩れてしまい。 風切り音の正体が現れた。 顔は闘牛のような勇ましい顔。 身体は鍛え上げられたのか筋骨隆々で 大きさは推定3m 右手には背丈よりも大きく推定5mの斧を持っており その斧には赤い血がべっとりとついている。 鑑定魔法で調べてみるが 多分これは過去の知識をフルに活用するなら ミノタウルスではないかと思っている。 「剛力 ミノタウルス」 なんか名前がついてる。 多分これはいわゆる2つ名ってやつなのか。 それにしてもあのパーティーたちが言ってたゴブリンキングの姿は見えない。 すると 「貴様も私の邪魔をするのか」 と声が聞こえてくる。 声の主はあのミノタウルスだ。 ミノタウルスにあなたは話せるのか?と聞いてみると 「我は昔に友人から言葉を教わった。」 納得しミノタウルスに敵意はないと伝え 貴様もという事だったのでミノタウルスに話を聞いてみる。 するとミノタウルスは構えていた武器を背中に直して臨戦態勢をといてくれたようだ。 君は何を目的で人里に近づいているのかと ミノタウルスに目的を問うてみる。 するとミノタウルスは 「我は未開の地と呼ばれるところに武者修行として向かう途中である。」 「未開の地にはこの山脈とは比較できないくらい手強いもの達が多いと聞き及んでおる」 彼に未開の地に住んでいることを伝えると 「そうであったか。」 と少し悩んでいるようだ。 なぜだか分からないが 彼と話していると気持ちが高揚するのだ。 その場の気持ちだったのか分からないが 俺と友達にならないか? そして良ければ未開の地を案内するよと話をする。 「友達のぉ。」 「お主は我が怖くないのか?」 と聞いてくるので あなたといて楽しい日々を送れそうと伝える。 「お主はなんという」 私は大神遼。 遼と呼んでくれていいと伝えると鼻息を荒くして 「よし遼と共に行こう!」 と興奮気味に承諾した。 こちらの名前を教えたが彼の名前が分からない。 ミノタウルスだと名前が長すぎるため何か名前をつけてもいいかと尋ねてみる。 「我は特に呼称にこだわっていない。」 そうだな。 剛力に似た名前にちなみたいところだ。 昔、メジャーリーグで「ロケット」と評されていた投手が剛腕だったような。 名前をつける際彼の話をよく聞くと 言葉を話すだけで恐れられ 言葉を話す悪魔として恐れられていたとのこと。 そういった経緯も踏まえて 彼の呼び名を「クレメンス」と呼ぶことにする。 クレメンスにも伝えると 「遼の国の言葉ではどういう意味なのだ?」と聞かれ 私の生まれた世界で語り継がれる人物だと説明すると 「偉人の名前を頂戴したのか!!」と少し武者震いをしている。 クレメンスにゴブリンの群れを見ていないかと聞いてみると 「そういえば奴ら大隊でこちらに向かっていたな 。」 「あやつら群れをなしてでしか行動できないが統率力は出会ってきた魔物たちの中で群を抜いておるな。」 そのゴブリンたちを今から殲滅しに行くことを伝えると 「我も手伝わせてもらおう!」 「しかしゴブリンの王ゴブリンキングが下界に出ることはほとんどないはずなのだが」 「ゴブリン達を操る何者かが暗躍しているのかもな。」 ゴブリン達を操る者? 「ゴブリンキングは襲名制じゃないからのぉ。」 「ゴブリンキングになる素質を持ったものが王として崇められる。」 「そんなキングは部下たちに命令するだけで自ら出てくることはないからおかしいのぉ。」 クレメンスの話を聞く限り なにか異変が起こっていて ゴブリン大隊がこちらへ1歩1歩歩み寄って来ているということだ。
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