act.1 君の待つ街に

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 地元の駅に着く手前で美音に声を掛け、二人でデッキに移動する。 「少しは寝れたか?」 「う〜ん、うとうとしただけ」  そうだろうな、もそもそ動いては繋いだ手を握り直していた。 「到着だ」  電車がホームに滑り込む。  美音を先に降ろしてキャリー毎俺が降りると、いきなり美音がホームを駆け出した。  え?ああ、そういう事か。 「みぃねえー!みぃ姉!!」  凪紗と真也がホームの向こうから駆けてきた。 「二人共走っちゃダメ!!」  その後ろにひかりを抱いた母ちゃんだ。その僅か20mも満たない距離を全力疾走のチビ達、美音がその腕を広げてしゃがんだ。    そこに飛び込む二人、勢いで倒れそうな美音の背中は俺が護っている。 「みぃ姉!みぃ姉…!!」 「みぃ姉ちゃん!!」  泣きながらギュッと美音にしがみつく二人だ。 「うん、ただいま…!凪紗、真也」  その小さな腕で愛しい存在を強く抱き締める美音。こっちも泣き出している。 「みぃ姉、もうどこにもいっちゃ嫌だ。ずっとお家にいて…!どこにも行かないで!!」 「うん、いるよ。もうどこにも行かないからね」 「みぃ姉ちゃん、あのねあのね…!」 「大丈夫真ちゃん、ゆっくりでいいから」 「うん…!」  そうだ真也、ゆっくりで良いんだぞ。美音はもうずっとあの家に居るんだからな。  ちび組を抱く美音を見ながら、やっぱり一番ボロボロ泣いているのは母ちゃんだった。  
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