act.1 君の待つ街に

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 その前日の俺は、当たり前だけど全然寝られなくて。  始発の電車で大阪に向かうというのに、結局一睡も出来なかった。 「あ〜もう、起きてるからいい」  そう言って布団から出たのはまだ完全に夜明け前の3時だ。始発の東京行きは6時過ぎでまだまだ早い。  水でも飲もうかと階段を降りると、何故かリビングダイニングの電気が点いていることに気がつく。  こんな時間に? 「あれ、拓海?」  キッチンに母ちゃんだった。冷蔵庫から牛乳のパックを取り出している。 「どうしたの…って、眠れないか。私もそうなの、カフェオレ飲む?」 「あ、飲む。砂糖は無しで」 「うん、待ってて」  母ちゃんがインスタントコーヒーを淹れたりレンジで牛乳を温めたりだ。 「はい」 「ありがとう」  それを受け取って一口含む。優しい温かさが口の中に拡がった。 「駅にはお母ちゃんが送るからね」 「うん、よろしく」  あと3時間もあるけど。 「今日中に会えると良いけど、飛行機だからわからないもんね」  時計を見ながら言う母ちゃん、母ちゃんも待ち遠しくて仕方ないんだ。  今日は美音がアメリカから帰ってくる。 「18時の新幹線に乗れれば今日中に帰って来れるけど、到着時間を考えたら明日が無難だね。その時は無理させないでどこかで泊まるから」 「うん、それは拓海に任せるわ」  その為に俺が迎えに行くんだ、ちゃんと関空まで。  本当は、ただ早く会いたいだけだけど。 「きっと美夜さんも待ってらっしゃるわね」  その為に美音はわざわざ関西空港に着く飛行機にしたんだもんな。それは間違い無いだろう。 「早く会いたいわ、私の大事な娘に」  それはこの家の家族みんなが思っている。  美音、みんながお前を待ってるよ。 f97bc776-9717-4600-b51c-f522e3976c79
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