act.1 君の待つ街に

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 俺が最後に美音に会ったのは冬のNYだった。  あれからやっと8ヶ月が過ぎて、美音のアメリカ留学期間が終わった。  美音は向こうの高校でも結構大きな絵画の賞を取って、学校側に留学期間の延長を熱心に勧められて困ったという。  俺の従兄弟であるアレックスには、美音が留学するきっかけとなったあの事件の事をメールで話した事がある。俺が帰国以後、学校ではアレックスが更に美音を気に掛けてくれていた。  俺にはそういう意識は少なかったが、アレックスにとって俺は間違いなく兄弟同然だったらしい。自分にできる事はなんでも言えと言ってくれた。  アレックスにはまたいつか会えると思う。  そして俺は、美音は大学には進学はしないという決心を告げられている。  既に美音にはいくつもの美術系大学から、推薦入学の枠で北央高校の方にオファーが来ているらしい。  けれど美音は、高校卒業後は初音おじさんの所の子供相手の絵画教室を手伝いたいそうだ。もう父ちゃんと母ちゃんには相談してあると言う。  美音は有名な画家になるよりも、家族の傍で静かに絵を描いて暮らしていきたいんだ。  アルバイト先は他にもファムおじさんの喫茶店やそれこそ真波酒造の醸造所がある。自営業の身内がいるこの地元なら、美音の仕事選びは自由だ。    俺も美音が、俺の傍でずっと笑っていてくれればそれでいい。  
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