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その日、美音は美夜さんが和裁のアトリエにしてる広い部屋で美夜さんと一緒にお泊りだ。
風呂に入ったあとには、ずっと前から美音の為に用意されていたという新しい浴衣を着て、俺の部屋に見せに来た美音。
俺の方も田中から新品のTシャツとトランクスをもらったので、入浴後は着てきた物は全部洗濯して乾燥までしてもらっていた。
「クーラー効いてるね」
「うん、快適だよ」
広さは6畳くらいかな、布団を敷いても十分余裕がある。掃除も行き届いていて、新しい畳が気持ち良い。
田中の話だと、このビルの5階から上が独身寮らしい。大勢寮生がいた頃はこの7階にも部屋があったが、今は5、6階に数人だけだそうだ。ちなみに田中は6階だ。
今回、美音がわざわざ関空経由で帰国するというから、ひょっとしたら俺が迎えに来るかもと。そうしたら引き留めようと部屋を用意してたらしい。さすがだ。
でも、これも結局美夜さんの為なんだよな。
「テレビ観てたの?」
「ああ、大阪の番組も久しぶりだと思って」
元からあんまりTVを見る方じゃ無いけど、さすがにちょっと懐かしい。ニュース番組でもバラエティ番組でも、ゲストは何故かお笑いタレントばかりという不思議な地方柄。
敷いた布団の上に座っていた俺の傍に美音が立ってクルッと廻る。今度の浴衣は紺色に柔らかいピンクの花柄だ。
「可愛い?」
「ああ」
とても似合っている、誰よりも俺に見せたいのも知っているよ。
そっと美音の手を取り、俺の膝に座らせる。浴衣の美音はもう俺の腕の中だ。
「可愛いに決まってる、俺の美音だ」
そのままそっと口付けた。美音の細い腕が俺の背中を抱く。
唇を離した後も、しばらくそのまま抱き合っていた。
久しぶりのお互いの温もりを確かめ合うように。
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