五万光年の氷菓子

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 百の声と千の匂いが、いっぺんに二人の周りで手招きした。  天幕の中へ客を呼び込む売り子の高調子、熱をもって熟した果実、こんがりと焦げた肉の脂、それを挟んだふわふわのポル、出来立ての湯気を上げる揚げ物、スープ、煮込み料理、焼き菓子……。  セドナはきゅっと口を結んだ。  ここは、恐ろしい場所だ。  いつも家に着いてから、自分にため息をつく羽目になる。袋から取り出した、大量の「予定外」の買い物を前にして。  セドナの暮らす惑星は、交易の中継地だ。市場にも、銀河のあちこちから食欲の種が飛んできて、それを目に、舌に、記憶に植え付けていく。  ミン・ガイル出身の店主が練り上げる、滑らかな砂糖菓子。コリピサ産のとんでもなく度数の強い、けれど甘くとろりとした金色のお酒。  それらの前をなんとか素通りして、セドナとマイケルはアルゴ産の果物屋にたどりついた。
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