五万光年の氷菓子

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 横でけろっと元気を取り戻していくマイケルとは対照的に、セドナは人込みを自動人形のように無意識にかき分けながら、考えにふけっていた。  養子の条件は問いません、とは言ったけれど、まさか「最後の一人」だなんて。夫が政府の役人だから? 最近はいっぱしの口も利くようになって、こっちもついカッとなって、したくない口げんかも増えた……本だってたくさん読んで、その通りやろうとするけれど、よけい訳がわからなくなる……さっき、やっぱり青のレトナークを買ってあげればよかったかな……わたしは、ちゃんとできてる? もっと、他に……。 「セドナ!」  セドナは一瞬、マイケルが自分の考えに気付いて声をかけたのかと思って、どきんとした。はっと振り返ると、目の前に幼馴染のディアニの、にこやかな橙の顔があった。 「ああ、ディアニ! 久しぶり」 「すごい人よね」  そう言ったディアニの後ろから、彼女の上着の裾を恥ずかしそうにつまんで、子どもが顔を覗かせた。マイケルより少し下の、橙の顔の女の子。 「グーテ! 大きくなったね」  グーテの母親譲りの金色の目が、照れくさそうにクルッと動いた。  セドナはぱっと顔を上げた。そして、真っ直ぐ前を向いたまま言った。 「マイケル、後ろの飾り屋さん、見ててくれる?」 「なんで」 「すぐ行くから。好きなの選んでて」 「わかった」  つないでいた手が、空っぽになる。  ディアニが、泣きそうに歪んだセドナの顔を見て首を傾げた。「あんた、どうしたの?」
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