帰りたい場所(イラスト追加しました)

2/10
前へ
/175ページ
次へ
(さむ……) 外に出ると、思ったよりも肌寒い。 パーカーのフードを被ると、少しだけ寒気が治まった。 とはいえ、また風邪をぶり返しても面白くないので、俺は足早に駅へ向かい、来た電車に飛び乗った。 (東条のトレーナーは明日、取りに行けばいいし……) バイト前、俺は駅前のクリーニング屋に寄り、東条のトレーナーを預けてきた。 翌日には仕上がるとの事だったので、明日にでも早速取りに行こうと思う。 (で、帰りに渡しに行こ) 明日の予定を頭の中でシュミレーションしているうちに駅に着き、俺はアパートへと急ぐ。 途中、コンビニに寄って夜食でも買い込もうかと思ったが、食欲もイマイチで、欲しいものが浮かばずだった。 (まぁいいや、テキトーに済まして、寝よ) 確か風邪薬はあったはずだし、夕飯もなんとかなるだろ。 そう思っていた……が、甘かった。 アパートの自室に戻り、冷蔵庫やら戸棚を確認した俺は、ガクリと肩を落とした。 いや、夕飯の食材は先日買ったカレーの材料と豆腐なんかがあったのだが、風邪薬がない。 ていうか、この体調でカレーを作る気にもなれない。 (はぁぁ……寝るしかない、か) 今更、「コンビニで栄養ドリンクだけでも買ってくれば良かった」なんて思うけれど、もう後の祭りだ。 (……東条の部屋に行けば) ふと思い立ち、つい壁に目をやる。 この壁の向こうには、東条がいる。 行けばきっと、甲斐甲斐しく面倒をみてくれるだろう。 (でもそれって……なんか、東条を利用してるみたいでイヤだな) 図々しい考えの自分に腹が立ち、髪をワシャワシャと掻き乱す。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加