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(さむ……)
外に出ると、思ったよりも肌寒い。
パーカーのフードを被ると、少しだけ寒気が治まった。
とはいえ、また風邪をぶり返しても面白くないので、俺は足早に駅へ向かい、来た電車に飛び乗った。
(東条のトレーナーは明日、取りに行けばいいし……)
バイト前、俺は駅前のクリーニング屋に寄り、東条のトレーナーを預けてきた。
翌日には仕上がるとの事だったので、明日にでも早速取りに行こうと思う。
(で、帰りに渡しに行こ)
明日の予定を頭の中でシュミレーションしているうちに駅に着き、俺はアパートへと急ぐ。
途中、コンビニに寄って夜食でも買い込もうかと思ったが、食欲もイマイチで、欲しいものが浮かばずだった。
(まぁいいや、テキトーに済まして、寝よ)
確か風邪薬はあったはずだし、夕飯もなんとかなるだろ。
そう思っていた……が、甘かった。
アパートの自室に戻り、冷蔵庫やら戸棚を確認した俺は、ガクリと肩を落とした。
いや、夕飯の食材は先日買ったカレーの材料と豆腐なんかがあったのだが、風邪薬がない。
ていうか、この体調でカレーを作る気にもなれない。
(はぁぁ……寝るしかない、か)
今更、「コンビニで栄養ドリンクだけでも買ってくれば良かった」なんて思うけれど、もう後の祭りだ。
(……東条の部屋に行けば)
ふと思い立ち、つい壁に目をやる。
この壁の向こうには、東条がいる。
行けばきっと、甲斐甲斐しく面倒をみてくれるだろう。
(でもそれって……なんか、東条を利用してるみたいでイヤだな)
図々しい考えの自分に腹が立ち、髪をワシャワシャと掻き乱す。
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