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「……んま」
「ふふ、おいし?まだ沢山あるから、おかわりしてね」
「……お前は食わないの?」
「え……僕?」
聞き返すと、東条は驚いたように目を見開いた。
俺はハッとして、あまり強要するのも良くないかと思い、遠慮がちに言う。
「いや、腹減ってないならいいけど。これ美味いし、その……一緒に食べればいいのに……」
「……」
またしても、東条は無言になる。
これは、もしや……
チラリと見ると、東条は頬を僅かに染めて口元を手で覆っていた。
「ちょ……!なに照れてんだよっ!?」
「だ、だって、まさか……陽斗君に誘われるなんて……っ」
「あ、あのなぁ……」
いちいち反応が大袈裟な東条に、俺は呆れてため息をついた。
(雑炊一緒に食べるぐらいで……っとに、馬鹿なヤツ)
「ふっ……」
「陽斗君?」
「くく……っ、わり……っ!」
もう、なんだか可笑しくなってしまって、俺はついに肩を震わせて笑いだしてしまった。
それを見ていた東条は、まだ恥ずかしそうに俯いている。
(そういう顔も、するんだ……)
あまり見ることの無いであろう東条の表情に、俺は笑って溢れかけた涙を拭きながら、暫し見入る。
すると東条が視線に気付き、ずいっと迫ってきた。
「もう……そんなに笑わないで欲しいな。雑炊、そんなに美味しかった?」
「お、美味しかった、けど?」
距離の近さに、今度は俺が頬を赤くする。
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