帰りたい場所(イラスト追加しました)

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(もー……!こいつの距離感、いつもどうなってんだよっ) 真っ直ぐな視線に耐え切れず目を逸らすと、東条は薄ら笑みを浮かべて、俺の顎を優しく捉えた。 そしてクイッと上向かされる。 「な、なに……っ」 「ん?そんなに美味しかったなら、少し味見をさせてもらおうかと思って、ね」 「え……んんっ!?」 断る暇もなく、唇が塞がれる。 そしてまさに味見をするかのように、唇を甘く吸われると、腰が砕けそうな感覚に襲われる。 「ぁ……ん、やぁ」 「ん……確かに。これは僕も頂こうかな」 「……っ、か、勝手にしろよっ!」 解放され、俺は顔を真っ赤に染め上げて、東条に背を向けた。 東条は上機嫌でキッチンへ行き、自分の分の雑炊の準備に取り掛かる。 (くそ……っ、東条のやつ……) 一体どういうつもりで……と思いかけて、東条の言葉を思い出す。 『陽斗君にとってもプラスになるならば、僕は陽斗君にこそ、この溢れんばかりの欲求を受け取って欲しい!』 (確か、ハグも、とか言ってたよな……) 要するに、俺は欲求の捌け口みたいなものなのだろう。 (捌け口……) あまりの聞こえの悪さに、心が暗くなる。 けれど別に、男同士だし、恋愛感情に発展して恋人同士になる訳でもないだろうし、お互いにとってWinWinなら問題もないはずだ。 (俺は気持ちいい思いが出来て、東条も欲求を発散できて……問題ない、ってかむしろ都合が良い、よな) 理屈上ではそう、納得も出来る。 が……。 なぜか心には、靄がかかったままだった。
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