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「え、ええ……っ?」
いきなり、そんな事を言われても。
友人だろうが、恋人だろうが、「○○って呼んで?」と言われると、結構照れくさいものだ。
特に俺みたいな不器用な奴は、なかなか素直に呼べないと思う。
(無、無理……っ)
早くもお手上げで、俺はフルフルと首を横に振った。
東条はフフ、と小さく笑う。
「だよねぇ。でも”東条”って呼ばれるのは、なんだかよそよそしくて、僕はあまり好きじゃない。だから……」
「な、んだよ?」
ふいに、東条が不敵な笑みを浮かべたので、俺はやや身構える。
と、突如、後ろ頭をぐいっと引き寄せられた。
「……!?」
「ふふん。陽斗君が僕を名前で呼ぶまで、キスはお預けだよ」
「は……はぁ!?」
鼻先が触れる距離で、東条はニヤリと笑う。
なんとも無茶苦茶な言い分に、俺は目を丸くした。
ていうか、キスはお預けって……恋人同士か!
俺は頬を赤らめながらも、キッと東条を睨む。
「んだよそれ!別にいいし」
「ふぅん。本当かな?」
「……っ!」
言いながら、東条はもう一度、俺の背中から腰元までをゆっくりと指先でなぞった。
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