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「あっ……ば、はか!やめ……っ」
「ふふっ、これでも我慢出来るかな、陽斗君?」
「〜〜〜〜っ」
このやり方はズルい。
ただでさえ東条のキスは気持ちよくて蕩けそうになるのに、それをこんな風に刺激された挙句、目の前でおあずけなんて……拷問もいいところだ。
(く……っ、名前でなんか、呼んでやらない……っ)
こうなったら、俺も意地だ。
”優真”なんて、絶対に呼んでやるもんか。
俺は無心になる為、目を閉じてゾクゾクとした刺激に耐える。
けれど……。
「んっ……」
目を閉じたら余計に感じてしまい、俺はもう堪らなくなって東条の背中に手を回して抱きついた。
「も、やだぁ……」
「ふ……なんだろうね、この可愛いのは」
降参すると、東条はやれやれと肩の力を抜き、俺をやんわりと引き離す。
そして正面から見つめると、優しく俺の頬を撫でて微笑んだ。
「やっぱり、陽斗君は可愛い弟みたいだ。下の名前で呼ぶのが嫌なら、”お兄ちゃん”って呼んでくれても、いいんだよ?」
少し冗談ぽく言う東条。
「う……ふぇぇ……っ」
俺はもう訳が分からず、泣いてしまった。
様々な感情が入り交じる。
男同士なのにドキドキする、
嫌だと言いながらも嫌じゃない、
キスが気持ちいい、
ハグも嬉しいと感じてしまう、
エロい気分になる、
でも東条にとって、やっぱり俺は……
(捌け口、なの……?)
しかも、”弟みたい”だの、”お兄ちゃんって呼んで”だの、東条から見て俺はそういう感じなんだと思い知らされる。
(……最悪)
思えば思うほど、俺は気付いてしまう。
自分の気持ちに。
(俺……東条のこと……)
そんな、ばかな。
あるわけない。
でももう、気付いてしまった。
この気持ち……
俺は、東条のことが……
好き。
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