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「ひ……っく」
「陽斗君?ごめん、ちょっとやり過ぎたかな……その、怒ってる?」
「……わかん、ない」
「え……?ちょっと、よく顔、見せて?」
「……っ」
東条の両手に顔を包み込まれ、正面から見つめられる。
(切れ長の……綺麗な目)
もう自分の気持ちに嘘をつけなくなった俺は、素直にそう思ってしまう。
でもその反面、捌け口というポジションの自分が辛くて泣けてくる。
(東条のやつ、きっと俺に恋愛感情なんてないんだろうな……ばーか)
心の中で、東条に向かってべーっと舌を出す。
(バカバカ、東条なんかもう知らな……)
半ば投げやりになっていた、その時。
「……っ!?」
優しく噛み付くように、唇が奪われた。
「……ん、っ」
「……は、陽斗君……かわい」
「……っ」
啄むようなキスはどんどん深くなり、甘く蕩けるキスに変わる。
(東条……今、どんな気持ちなんだよ……俺は、これでもやっぱり捌け口なのか?)
ただの欲求発散にしては、キスが甘すぎて。
(もう、いい……)
気持ちを確認したいけれど、それよりも今は現実を受け止めるだけで精一杯。
結局その夜、俺は東条のキスに夢中になり、いつの間にか腕の中で爆睡していた。
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