お泊まり♡

7/10
前へ
/175ページ
次へ
――翌朝、8時。 「おはよう♡エンジェル♡熱、下がったね」 「はい……?」 起き抜けに、抱きしめられて頬にチュッと軽いキスをされる。 見れば、東条の手には体温計が。 どうやら、またしても寝ている間に熱を計られたらしい。 そして、窓からは朝日がキラキラと差し込み、テーブルには朝食のパンと紅茶と栄養補給用のゼリーが…… 「……って、ちょっ……離れろよ!」 寝起きの脳ミソが冴えてきて、俺は東条の腕の中で身動ぐ。 「ええ?そんなに強がらなくても……昨夜はあんなに、僕を求めて泣いてたじゃないか」 「ばっ……☆%×△?□※!」 耳元で甘く囁かれ、俺は一気に顔を赤くした。 (そうだ、俺……東条の事……っ) 好きだって、自覚したんだった――。 しかも、下の名前で呼んで欲しいとか言われてたっけ。 まぁ元々、俺は東条の事を”東条”と呼ぶことはあまり無かったわけだけど。 (……優真……) 口には出さずに練習するも、既に顔から火が出そうになる。 (こんなの実際口に出したら……) 考えただけでも、恥ずかしすぎて無理! 俺は東条の胸元をぐっと押し返し、ベッドから立ち上がった。 「あっ、朝ごはん……っ!用意、してくれたんだなっ」 「ああ、うん。陽斗君の体調も良さそうだし、今朝は普通の食パンと紅茶にしてみたよ。あと、栄養補給にゼリーは欠かせない。病み上がりだし、パンは無理に食べなくていいから、ゼリーは飲むんだよ?それと、陽斗君、アールグレイは好きだった?」 言いながら、東条も立ち上がり、俺の隣に立つ。 「アールグレイ……」 アールグレイは、過去に何度か飲んだことがある程度だけれど、香りが印象的な紅茶だったと思う。 記憶を辿り、俺は自然と笑顔になる。 「アールグレイって、いい香りの紅茶だよな。俺、好きなやつだと思う」 伝えると、東条は僅かに目を見開いて後ろ頭に手をやった。 そして、俺から視線を外して言う。 「そ、そうか……それは良かった。こほん。さぁ、どうぞ」 優しくエスコートされ、俺はおずおずと椅子に腰掛けた。 「いい匂い……」 「そうだろう?さ、どんどん食べて。今日は僕も、講義とサークル活動で忙しくなるからね」 言いながら、東条も目の前の椅子に腰を下ろす。 お互い椅子に座り、すっかり整えられたテーブルの上を見渡すと、俺は遠慮がちに両手を合わせた。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加