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――翌朝、8時。
「おはよう♡エンジェル♡熱、下がったね」
「はい……?」
起き抜けに、抱きしめられて頬にチュッと軽いキスをされる。
見れば、東条の手には体温計が。
どうやら、またしても寝ている間に熱を計られたらしい。
そして、窓からは朝日がキラキラと差し込み、テーブルには朝食のパンと紅茶と栄養補給用のゼリーが……
「……って、ちょっ……離れろよ!」
寝起きの脳ミソが冴えてきて、俺は東条の腕の中で身動ぐ。
「ええ?そんなに強がらなくても……昨夜はあんなに、僕を求めて泣いてたじゃないか」
「ばっ……☆%×△?□※!」
耳元で甘く囁かれ、俺は一気に顔を赤くした。
(そうだ、俺……東条の事……っ)
好きだって、自覚したんだった――。
しかも、下の名前で呼んで欲しいとか言われてたっけ。
まぁ元々、俺は東条の事を”東条”と呼ぶことはあまり無かったわけだけど。
(……優真……)
口には出さずに練習するも、既に顔から火が出そうになる。
(こんなの実際口に出したら……)
考えただけでも、恥ずかしすぎて無理!
俺は東条の胸元をぐっと押し返し、ベッドから立ち上がった。
「あっ、朝ごはん……っ!用意、してくれたんだなっ」
「ああ、うん。陽斗君の体調も良さそうだし、今朝は普通の食パンと紅茶にしてみたよ。あと、栄養補給にゼリーは欠かせない。病み上がりだし、パンは無理に食べなくていいから、ゼリーは飲むんだよ?それと、陽斗君、アールグレイは好きだった?」
言いながら、東条も立ち上がり、俺の隣に立つ。
「アールグレイ……」
アールグレイは、過去に何度か飲んだことがある程度だけれど、香りが印象的な紅茶だったと思う。
記憶を辿り、俺は自然と笑顔になる。
「アールグレイって、いい香りの紅茶だよな。俺、好きなやつだと思う」
伝えると、東条は僅かに目を見開いて後ろ頭に手をやった。
そして、俺から視線を外して言う。
「そ、そうか……それは良かった。こほん。さぁ、どうぞ」
優しくエスコートされ、俺はおずおずと椅子に腰掛けた。
「いい匂い……」
「そうだろう?さ、どんどん食べて。今日は僕も、講義とサークル活動で忙しくなるからね」
言いながら、東条も目の前の椅子に腰を下ろす。
お互い椅子に座り、すっかり整えられたテーブルの上を見渡すと、俺は遠慮がちに両手を合わせた。
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