お誘い

7/10
前へ
/175ページ
次へ
外はもう薄暗く、街灯が道を照らしていた。 とはいえ、この辺りは学生も沢山住んでいるので、まだまだ街は賑やかだ。 ちなみに、この辺りについてもう少しだけ紹介すると…… スーパーまでは俺の居るアパートから歩いて5分ほど、コンビニも何軒かあるし、駅もそう遠くない。 最寄りの駅もそこそこマイナーな駅たがら、家賃も良心的。 それに加え、病院も郵便局もわりと近くにあり、大学までは一駅となれば、学生にとってはかなり住みやすい土地だと思う。 (んー、今日はカレーにしよっかな) スーパーに着くと、俺は買い物かごを手に取り、今晩の食材を物色する。 (カレーなら明日も食べれるし……あ、あと味噌汁も作ろうかな) そう思い、冷蔵品コーナーへ移動する。 そして、絹ごし豆腐に手を伸ばすと……。 「おっと、失礼」 「あ、いえ、すみませ……え!?」 同じ絹ごし豆腐に伸びてきた手の主を見上げて、俺は愕然とした。 「あ……あ、あんた……ッ」 「やぁ、またしても偶然だね。凄いよ……やはり僕達は出会うべくして出会……」 「失礼します!」 信じられない。 まさかスーパーで会うなんて。 突然の東条の出現に、俺は内心青ざめながら颯爽と逃げた。 逃げるが勝ちだ。 しかし。 (げ、追いかけてくる……!?) チラリと後方を確認すれば、東条が追ってきているではないか。 「ちょっと待って、なんで逃げるの!?」 「つ、ついてこないで下さい……!」 「いやいや、待ってよ、僕が何かしたかい!?」 (しただろーがっ!) 俺は内心ツッコミを入れながらも、スーパーの中を早足で移動する。 しかし、東条の方が足が速かった。 いや、足が長かった、のかな。 悔しいけど。 俺はまんまと追いつかれてしまった。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加