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義和 side
その日の夕方、社長室、の隣。
ケイティはソファに蹲り再起不能になっていた。
「……きもち、わるい……」
「ばっっかじゃねぇの?!慣れないモン馬鹿食いするからだよ!」
通話状態のままポケットに入れられていたケイティの携帯から全て聞いていた義和は、色々と心配になりケイティの元を訪れていた。
「今夜会社の新年会でしょ?!動けなくなる程食ってどうすんだよ!」
腕組みをして兄を見下ろしながら義和が怒鳴ると、ケイティはゆるゆるとクッションから顔を上げ反論した。
「……食べたくて食べたんじゃない。兄上が次から次へと……」
「断れよ!」
「出来る訳ないだろ……。甘酒を渡してからずっと、兄上は笑っていたんだぞ?!あの兄上が!訳もなく笑ってたんだ!裏があるに決まっているだろ!断れるか!……うぅ……」
腹から声を出したせいか、ケイティは再び小さくまるまった。
どうやらまた作戦は失敗のようだ。
ケイティに初詣の意図は伝わらなかったどころか、最悪の思い出になっているかもしれない。いや、むしろ忘れたいくらいだろう。
「兄ちゃんも兄ちゃんだよなぁ。新年会の事忘れてたのかなぁ?」
「兄上は新年会には行かないぞ?」
「は?!何で?!だって取引先とか政財界とか色々偉い人来るんでしょ?欠席って大丈夫なの?!」
「義和を代わりに行かせるそうだ」
「は?!聞いてねぇし!」
兄弟一短気な義和は直ぐさま兄に電話し一気に捲し立てた。
「もしもし兄ちゃん?!俺新年会行かないからね!俺は俺で社員の皆と宴会すんだから!」
『何だ、折角のご馳走だぞ?お前好きだろ?』
「好きだけど!食いモンで釣られねぇから!つーかご馳走なら兄ちゃん行けばいいじゃん!」
『俺はもうご馳走は食べたからいいんだ』
「何、もしかしてあの露店の事言ってんの?そんなに美味かった訳?」
『いや、味は普通だが……何だろうな。何故か分からんが、パーティの料理よりアレの方が良いと思ったんだ。何故だろうな』
そう言った兄の声が今迄聞いた事のない位優しく聞こえたせいで、義和は何も言えなくなってしまった。
今回の「兄弟仲良し大作戦」
果たして成功か失敗か。
何にせよ去年よりはマシだろう。
まだ明けたばかりの新年に、多少は希望を見出す義和であった。
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