初詣

7/12
前へ
/12ページ
次へ
義和 side 2022年1月1日朝8時過ぎ、いつもの社長室。 桂木と野々村、そして義和はソファでのんびりティータイムをしていた。 「というわけで、二人は今初詣行ってんの。ね、マジウケるっしょ?」 義和が昨夜(今朝?)の電話での会話を話すと、部下二人は揃って溜息をついた。 「全く、社長も出勤しないならそう言って下されば良いのに。携帯も繋がらないし何事かと思いました」 「うわ、野々村君も桂木君もマジで何も知らされてないんだ、可哀想。もうさ、休みにしちゃいなよ。社長も副社長も来てないんだしさ。つーか毎年思ってたんだけど、この会社何で元旦から働いてんの?兄ちゃんエグいわぁ。しかもケイ兄も何も疑問に思わないとかヤバいわぁ」 当然ながら自分の会社を休みにした義和は、兄の非常識ぶりにケタケタと笑った。 すると、噂をすればなんとやら、ケイティから電話が掛かってきた。 「あ、もしもしケイ兄?明けまし…」 『兄上と初詣に行く』 新年の挨拶を遮られ一瞬ムッとしたが、昨夜の知宏と同じような言い方に怒気が削がれてしまった。 やはりあの二人はどこか似ているのかもしれない。 「……で?」 『お前の入知恵か?』 「入知恵って何だよ?俺関係ねぇよ」 無くもないが、どちらかと言えば首謀者は時子だ。 恐らく神社へと移動中なのだろう。電話越しに車の走る音が聞こえた。 『惚けるな。これ、お前の所のリムジンと運転手だろ』 「は?!ちょ、え、なん、勝手に何してんだよ、も〜。自分とこの使えばいいじゃ〜ん。つーかウチは正月は全社員休みなんだよ!運転手可哀想じゃんか!あーもー!電話、兄ちゃんに変わって!そこにいるでしょ?」 『いる訳ないだろ』 「は?初詣一緒に行くんじゃねぇの?」 『現地集合だ』 「な ん で だ よ !同じ所から同じ所に行くのに何で別々なんだよ?!」 『知るか。それよりも、お前は関わってないんだな?』 「あぁ」 『分かった』 通話が切れたのでとりあえず納得したのだろう。面白くなりそうだとは思ったが、やはり少し面倒になってきた。 「なんなの?やっぱ面倒臭い予感しかしない」 「確かに面白そうな事にはなりそうですが、今年の『兄弟仲良し大作戦』とやら、先が思い遣られそうですね、義和くん?」 桂木が他人事のように悪そうな笑みを浮かべた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加