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義和 side
数分後、再びケイティから着信があった。義和は野々村と桂木にも聞こえるよう、スピーカーに切り替える。
「何?もしかして兄ちゃんと合流できなくて迷子とか?」
『違う!兄上なら門の所で待ってるのが車の窓から見えた!まだ合流はしてないが……ってそうじゃなくて、兄上が着物を着ている!』
「うわ、兄ちゃん張り切ってんな……で?」
『お、俺はスーツで来てしまったんだ。お前の着物、貸してくれ!』
「何でだよ、ケイ兄持ってるだろ?兄ちゃんから貰ったヤツ!」
『あれはモンツキというやつだ!俺は着物なんか持ってない!』
「それも着物だよ!紋付袴!もー中途半端!ケイ兄の日本文化の知識マジ偏ってる!ってか着替えなくていいから!スーツでいいからさっさと行けよ!」
『わ、分かった……』
恐らく人生初となる兄とのプライベート時間に戸惑っているのだろう。声から不安が滲み出ている。
そんなケイティの様子に三人は必死で笑いを堪えた。
通話を終えると、面倒と言いながらもやはりツボに入ったのか、義和はソファの上で腹を抱えて悶絶し始めた。
「やっべ、くっっそウケる!ケイ兄どんだけテンパってんだよ!兄ちゃんも着物とか!あはははは!次電話きたら録音しよ!はははは!」
「よ、義和君、笑い過ぎでは……」
「野々村君だって声震えてんじゃん!我慢せずに笑っていいよ!」
15分程笑い転げた後、義和は再び携帯を取り出し今度は知宏に電話を掛けた。
「もしもし兄ちゃん?あけおめ〜」
『義和!ちょうど良かった!実は少し困っていてな。ケイティと初詣に来たのは良いが、賽銭箱というのが見つからないんだ。大きな人集りが出来ていて探す事も進む事もできない』
「人集りって行列でしょ!?それ並んでたら勝手に辿り着くから!言っとくけど神社は店や遊園地と違って貸切出来ないからね。大人しく並んでよね!」
『あ、あぁ。分かった』
義和が電話を切るのを確認して、今度は野々村と桂木も堂々と笑い出した。
「と、知宏様、もしかして初詣初めてなんですか?」
「かもね。でも調べてる筈だからお参りの仕方とかは分かってると思う」
「しかし貸切とは……流石にそこまではしないのでは?」
「するよ!兄ちゃんならする!俺が言わなかったら絶対してる!」
断言する義和に、部下二人は段々とそんな気がしてきた。
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