思惑

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月曜日。 立体のデザインパネルの納品の為、私は横山さんと会社の車でやって来た。 “焼酎と貝料理の店” 貝が擬人化されたデザインの立体パネルの簡単な取り付けとライトの調整。 何でも屋なデザイン事務所だ。 こんなもんかな、と言いながらこだわりが強い横山さんはライトの調整にもう30分もかけている。 「璃子、どう思う?」 「バッチリです。」 このやり取り三回目なんだけどな… ようやく納得した横山さんを助手席に乗せて私が運転していた。 「あー疲れた。」 「おつかれさまです。」 「璃子着いてくる意味あった?なんかした?」 「見守ってました、横山さんを。」 「はあ?璃子だけなんか食ってたじゃん?」 「なんかじゃなくて、あれはチュロスです。」 「知ってるわ、チュロスぐらい。俺の事オジサン弄りしてくんの感じ悪いぞ。」 「被害妄想ですよ。横山さんて顔がいいからちょっとひねくれてますよね。あははっ。」 「璃子が20歳でコネ入社じゃなかったら、確実にいじめてる。」 「どうぞ?私いじめには少し慣れてます。」 「……まだ嫌味言われてんのか?」 横山さんはそれとなく私を気遣ってくれていた。 朝の2人だけの時間がそうさせていたんだと思う。 「もう少しって感じです。頑張って認めてもらえるようにします。」 「まぁ、なんかあれば言ってくれれば俺が社長に上手く伝えるし。」 「あははっ、オジサン、ありがとうございます。」 「おいっ。オイオイッ。クソ生意気女です?あー?」 「クソはいらないけど、生意気ではあります。」 「そんなんだと彼氏に愛想つかされんぞ?」 「……横山さん、地雷ふみました。」 私はその後、貝になった。
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