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朝露が田舎のロード沿いのラブホテルの植樹を濡らしている。
黄色いライトがそれを照らして、少し上を見ればまだ夜の空が広がっていた。
そこを出て帰宅、私は自宅に静かに足を踏み入れると、ママの部屋からネックレスを持ち出して、礼央くんに渡した。
そして暗闇に礼央くんを見送ると、もう少し眠ることにした。
それが悪かった。
ネックレスがないと騒ぐママは朝ごはんも作らずに探していて、私は寝坊してしまった。
ママに事情を3分で説明しなだめると、急いで会社に向かった。
既に駐車場にボルボがとまっている。
「おはようございますっ。」
横山さんに声をかけて、取り敢えずコーヒーメーカーの準備をしようとして青ざめる。
もう用意してある。
キッチンから顔を出して見るともうパソコンを睨みつけている横山さんがいた。
「横山さん、すみません。お手を煩わせてしまって。」
「…………………あぁ。」
聞こえたわけではない。
口の動きを変換しただけ。
コーヒーをカップに入れて、その彼のデスクに置いた。
「どうぞ。ご自分で入れられたものですけど。」
私が言うと、彼はパソコンを見つめながら答えた。
「具合でも悪いのか?」
そこでようやく私を見た。
「いえ。あの。シンプルな寝坊です。」
「……………………ふーん。」
「すみません。気をつけます。」
「まぁ遅刻ではないし、彼氏と会うのも大事ではあるな。」
「え、なんで私が昨日彼と会ってたこと知ってるんですか?」
「鏡見る時間もない程だったってわけか。お若いね。」
「どういう意味ですか?」
「………………首。隠せ。社会人だろ?」
「え?」
私は急いで戻ってキッチンにある鏡を見て驚いた。
首下ぎりぎりにキスマークが。
礼央くんっ。
ハンカチを出して空気を含ませると首に巻いた。
「横山さん。すみません、朝からお目汚し失礼しました。」
「ハハッ。まぁ璃子20歳だもんな。彼氏は?」
「同い年です。」
「仕方ないな。でも社会人としてはアウト。彼氏にも言っとけ。」
「はい。すみませんでした。できたらこの事皆さんには秘密にしてください。」
「あっ?俺がそんなくだらない噂話するわけねーじゃん。」
「そうでした。重ねて失礼しました。掃除、クイックバージョンでしますので、少しバタバタしますがご了承願います。」
私は急いで掃除機をかけた。
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