思惑

3/7
前へ
/428ページ
次へ
ビルの3階にある居酒屋には沢山の人。 30人はいる。 女子大だった私はこういったものにほとんど参加せずに大学生活終わったからどうも慣れない。 「礼央くんの噂の彼女でーす。」 「僕の璃子ちゃん。」 言われながらぺこぺこと頭を下げて挨拶していると、後ろから目を塞がれた。 「誰?」 「同盟組んだのにー」 「海斗くん?」 「当たりっ。」 振り返ると海斗くんが手を広げてきて私をハグする。 海斗くんに会うのは久しぶりだった。 海斗くんは礼央くんの幼馴染。私とも友達。 「璃子ちゃん、大変だったね。」 大学を退学して働き出した私はこのやり取りを何回もしてきた。 「うん。でも今働いて楽しいよ。」 「おっ流石じゃん。元気そうで良かったよ。」 海斗くんは変わらない眼差しを向けてくれた。 「海斗くん。彼女出来た?」 「クーッ。聞いてくれるんだね?」 「うん。私惚気話大好きなの。」 海斗くんは彼女が出来てラブラブだって礼央くんから聞いていた。 「比奈(ひな)」 海斗くんが呼ぶ方向を見ると、綺麗な子がこちらを見た。 その時の目つきが気になった。 「どーもーっ。」 比奈さんは海斗くんの横に座ると、海斗くんにもたれかかった。 「海斗の彼女の比奈ですっ。」 「あははっ。璃子です。よろしく。」 「礼央の彼女なんでしょ?会いたかったんだーっ。携番交換しよーよっ。」 そこに礼央くんが私の後ろに回って抱きしめてきた。 「璃子ちゃん浮気現場発見。」 礼央くんは出した私の携帯を奪った。 「浮気って、相手女の子じゃない。」 「あーっ。言い訳はだめ。」 礼央くんはますます抱きしめてくる。 ふざけているのはすぐ分かる。 「比奈。ほっとこ。この2人もうずっとこんなんだから。あははっ。」 海斗くんは比奈さんの肩に手を回した。 その時の私を見る比奈さんの目が怖かった。
/428ページ

最初のコメントを投稿しよう!

102人が本棚に入れています
本棚に追加