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そんな自分を見て、シドが笑う。
『……ははっ。 兄ちゃんがさ。女の人に楽しそうに笑ってるのって、俺初めて見た』
「……そんな、女にまるで免疫が無い奴みたく言うなよ……」
分かってる。 シドが言うことは正しい。 仕方ないではないか、自分は王であるのだから。 女性に気を許して話すことなど、簡単には出来ない環境なのだ。ましてや、興味を持つことなど有り得てはならない。
「シンフォレス・ミノルとしては……オフレコだぞ? ……折角なんだから、ここでの生活を楽しみながら頑張りたいなって。 そう思ってるんだ。 ……お前も傍にいるんだし、な」
シドが嬉しそうに寄り添ってきた。 そんな時は昔から、頭を撫でてやると喜ぶ。
『……兄ちゃんに、もっぺん会えたら……もうそれでいいって。 今までずっとそう思ってたんだ。 でも、今は……帰りたい、一緒に。 もっぺんみんなに、会いたいよ……!』
シドは自分に頭をわしゃわしゃと掻き回されながら、泣き出してしまった。 望郷の念に駆られたのだろう。 その気持ちは痛いほど、よく分かる。
「……当たり前だ。 帰るぞ、必ず」
シドを慰めながらも自分は、気持ちを故郷シンフォレスよりも現代に向ける。 まずは、ララの家に馴染まなければいけない。 彼女が男性へと変貌するに至ってしまった原因と責任は、自分にあるのだから。
……どんな苦境に立たされたって、親友の火の王の彼ならばこう言うだろう。『俺は絶対に負けねえ』と。 ならば、自分だって。 いたいけな弟にカッ飛んだ彼女、それらまとめて自分が引っ張っていかなければ。
「……絶対……!」
……克つ。 勝つ……! 自分の未来を自らの手で切り開くことを、渇望し続ける―――
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