アイ(哀)は克つ

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悲しみと怒りを力に変えた森の王は、死闘の果てに大魔王を消滅させた……自らの命と引き換えに。 彼は配下の者に「シドを見つけてやらなくちゃ」と言い残してこと切れたらしい……しかしそこで、ややこしいことが起こった。 死した森の王の肉体と精神が可視化された状態で分離された。 精神はそのまま天に召されていき、肉体は……大魔王の最後の思念がそれを乗っ取ったのだ。 配下の者はそれを制しようとしたが、先に肉体ごと大魔王は消えてしまった。 森の平和は保たれたが、シンフォレスは王の血筋を完全に絶たれてしまった……。 そして、シンフォレス・シドは死にきれていなかった。 彼の無念は霊体となって、王を失った森に帰ってきた……成仏出来なかったのだ。 そこでシドは配下の者より、シンフォレスから大魔王は去ったこと、兄が死んだこと、大魔王が兄の体を乗っ取ったことを聞いた。 忠臣であった配下の者には、シドは視認出来たそうだ。 シドは、配下の者にシンフォレスを託した。 死んでしまったシドでは、もうどうすることも出来ないからだ。 そして彼は兄を探すことを決意する。 いつ、どこの世界に転生しているのかなんて分からない、だけど……彼は兄の体が大魔王に乗っ取られたままだなんて、許せなかった。 彼は一人堅く決意する、必ず見つけ出して今度こそ大魔王を倒す、と……! ――― 『俺、霊体だから……生きてるもんにはなかなか見えないみたいで。 あちこち旅の途中で、長いこと。 誰にも見つからないけど……誰とも話せなかった……!』 泣きそうになるシドの頭を、マモちゃんは優しく撫でた。 が、眼福……!
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