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「……今はな」
マモちゃんは、おそらく泣きそうになっているのだろうシドの頭にポフンと手を置く。
『え……』
「多分、察するに、だけど。 あそこに倒れてるのがその森の王の身体、なんだと思う。
……野辺さんを初めて見た時から妙に惹かれた、その訳がやっと分かった。 ……俺の本当の身体はそっち、なんだな」
うひゃあぁ、なんですと―――?! ちょ、ちょっとそれ……聞きたくなかったかも……!
『そうだよ! べノーラの奴、兄ちゃんの身体を乗っ取ったうえに、改造して女に成りすましてまでして。 兄ちゃんの精神体のほうに近づいてたんじゃないか……!』
「……うん。 でも、俺は『大森 護』だし、彼女は『野辺さん』、なんだ。 お前が、遠いところから長い時間を旅してきてくれたように……俺たちは俺たちの今を過ごしてきた。 そして、それは嘘でも幻でもない。 ……分かるか?」
マモちゃんはしゃがんで、シドと目の高さを合わせた。
「俺は、全てを受け入れる。 ずっとすれ違ってきたけど……俺たちの手で、もう終わらせよう? だから」
『……兄ちゃん……』
「早く!」
『分かった……母なる森における我らが偉大なる魔法王、『シンフォレス・ミノル』―――!』
シドの声はもはや慟哭だった。 その声により、ダークグレーの空に閃光が走った。 光の筋が空から超高速で落ちてきて……それはもう、凄まじい雷のように。 横たわる森の王の身体……ついさっきまでの私の本体、に直撃する。 森の王がゆっくりと起き上がる。 マモちゃんが彼と対面する。
―――今こそ、ひとつに……!
そんな声が聞こえた気がした。 気がつけばマモちゃんは消えていて、代わりに森の王ことシンフォレス・ミノルが仁王立ちにて大魔王べノーラin私を睨みつけていた。 今ここに、若くして急逝してしまった森の王が、たしかに復活したのだ……!
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