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「明日、馬車をおまえの下宿の前まで迎えに行かせるよ。大切な申し込みをするつもりなんだ。だから、おまえも、そのつもりでいてくれ。さぁ、気をつけて帰れよ」
中尉の顔を見ただけで嬉しくてフアフアしている。先の事は分からないけれども、この先も愛する人の側にいたい。
「あたい、あんた専属の鼠になるよ。どんな任務もこなしてみせる。なんでもする。一生懸命働くよ」
「いや、そういう意味じゃない。ああ、まぁ、いいか。とにかく来てくれ」
ポンポンッ。アイビーの頭を撫ぜてから綺麗な足取りで歩き出している。その後ろ姿を見送った。
嬉しさに滲んだ視界の真ん中に彼がいる。
(好き……。あたい、あんたが好きなんだよ。誰よりも大好きなんだよーーー)
いばりんぼの中尉さん。また、この人と暮らせる。
それだけて、世界中が眩く豪華な輝きに満ちて、全身がウキウキしてくる。
アイビーは胸を張り大きな瞳をキラキラさせながら微笑む。
そして、光の射す表通りへと元気良く軽やかに踏み出していたのだった。
おわり
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