最終章 幸せな未来

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「部下がサボンの工作員を見張っている。俺は補佐する為にここにいる。任務内容に関しては詳しくは言えないが、おまえも、だいたいの想像はつくだろう?」 「うん、なんとなく……」  そんな事よりもサボンへの遠征の顛末が気になり、もどかしいような気持ちで見上げる。 「ねえ、娼館に連れ去られた女の子達はどうなったの?」 「それなら成功しているよ。話せば長くなる。色々と大変だったんだ」   サボンにいる女の子達は三箇所の娼館にいた。同じ夜、同時刻に、一斉に救い出す為に綿密な計画と協力者を必要とした。そして、サボンの国境を越えるのに苦労した。  予想外の出来事もあり、時間がかかってしまったという。 「二十人いた女の子達の大半はサボンの隣国のパーラメント共和国に移ったんだよ」  こんな状況になったことが恥しいから故郷には帰らないと泣いていた者もいる。 「俺達と共に我が国に戻ると言ったのは十五人。残りの五人は別の国で生きる事を望んだ。俺の母上が帰国した女性の心のケアに当たっている」 「帰国したら知らせてよ! あたい、ずっと不安だったんだよ」  ああ、どう言えばいいのだろう。溢れ出す想いを煌めかせながらも声を震わせていた。 こんなに好きなのに目を吊り上げて彼を責めてしまっている。 「なんで、なんで、あたしにすぐに会いに来てくれないのさ!」 「静かにしろ……。色々あるんんだ。今は時間がない」 「えっ?」  久しぶりの再会なのに。こんなふうに素っ気無く突き放されるなんて……。 (もう、あたいに用はないのかな……)  ショボンとしていると彼は小声で言った。 「アイビー、明日は俺の誕生日だ。荷物をまとめて我が家に来てくれ。あれから、どうなったのかを詳しく話してやるよ」  何とも甘美な不意打ちに身体が震えた。腕を引き寄せられて口づけられている。早鐘のように胸が高鳴り足が震えて、頭の中は真っ白になっている。 「続きは、また明日……」  愛する人から受けるキスはチョコレートよりも甘くて、身体の芯から溶ける様な気持ちになってしまって何だかクラクラする。 「アイビー、心配かけて悪かったな」  思わず泣き出しそうになっていた。心の底から中尉を尊敬している。会えない時間が長くて寂しかったけれど、そんなことで相手を責めていけない。 「お仕事、頑張ってたんだね……。怪我は治ったの?」 「ああ、すっかり治ってるよ」  アイビーはその言葉に安堵したように微笑む。すると、アイビーを見つめ返しながら中尉が眩しそうに目を細めている。 「おまえ、やっぱり可愛いな」  気のせいだろうか。彼は、どこか困ったような顔になり頬を染めている。少し間を置いてから、彼はスーッと深呼吸をした。なぜか、改まったように表情を引き締めてから告げたのだ。 
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