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1. 電撃発表
それはまさに、青天の霹靂とも言うべき出来事だった。世間一般の人にとってはまったく気にとめないことなのかもしれないが、少なくとも俺たち2人にとっては、どんな超常現象よりもとんでもない衝撃の事実だったのだ。
「おいっレイ!! これ!! これ見ろって!!」
そう、スタジオの椅子の上でそのまま寝ていたレイを叩き起す。なんでこんな姿勢のまま寝れるんだよ、というツッコミも今はどうでもいい。
「なんだよヨウ……30分仮眠くれって言ったろうが」
「30分はもう経ってるわ。それよりも! これ!!」
そうレイにスマホの画面を突きつけ、彼は重たい瞼のままそれを凝視したけれど、すぐにその瞼は一気に見開かれ、彼は仰天の声を上げた。
「い、"independent" の、復活ライブだってえ!?」
「そうなんだよ!! やばくねえか!? 一体何がどうなってるんだよ!!」
"independent" は、俺たちのバンドが尊敬してやまない伝説のロックバンドだ。10年前、ボーカルである加賀秀太が他界してしまってからは、活動を休止していたのだけれど……。今日の6時、突如復活ライブを行う旨が発表されたのだ。
「スケジュール確認しなきゃ!! 行けるか!? 何も予定入ってないか!?」
「幸い皆休日っぽい!! あ、でもフータとアオイはバンド講座か……」
「仕方ない、俺たち2人だけでも行くぞヨウ!! チケットは!? いつ販売開始だ!?」
「えっと……今日の9時から!!」
「なんだよ!! 曲作ってる場合じゃないじゃねえか!! 今からスタンバるぞ!!」
そう、今から急用が入ったわけでもないのに、お互いに何故か荷物をまとめたりして、途端に落ち着きを失くしずっとソワソワしていた。でも、仕方がない。まさか、もう一度''independent" のライブを観に行ける日が来るとは思いもしなかったのだから。
けれど、復活ライブといっても、一体どうするのだろう。未だに頭の整理が追いついていない。
とりあえず、今は"independent" のライブに行けるという喜びを噛み締めておくことにしよう。9時、俺たちは無事にチケットを申し込むことができた。抽選、当たりますように……。
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