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〝山桜里央〟という人物
「ラッキー! 今日も絶好調!」
一人の女子生徒がクラスへ駈け込んで来る。
緊張した雰囲気が漂っていた教室が、呆気にとられた瞬間だった。
息せき切りながら、女子生徒は残り一つ空いていた席、すなわち芝崎哉芽の隣の席に、どっかりと腰を下ろした。
哉芽は「俺の隣ってこいつだったのか」と唖然としながら隣の席を凝視する。
今日はこの高校『県立北高等学校』の入学式であった。
クラスの入り口には1―1と札が掛かっている。クラスは緊迫感に包まれていた。
入学式ということもあるが、その前に慌ただしい防火設備の誤作動で学校全体がバタバタしていたからだ。
だから、入学式の開始時間はとっくに過ぎていたが、こうやって待機している状態だった。
(それにしても、入学式に遅刻とかあるのか。そして『運良く』このバタバタで遅刻を免れることとかあるのか)
哉芽はどうしても納得いかない。
遅刻を免れ、嬉しそうな顔をしている自分の席の隣の同級生――山桜里央に対する第一印象は最悪だった。
「お前みたいなのを見ているとイライラする」
哉芽は里央の顔を睨むと、つい毒づいてしまっていた。
言って後悔の念からか、ため息が出てしまう。
隣では里央が呆気に取られているようで、ポカンと哉芽を見ていた。
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