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「……ん…今、何時?」
携帯の画面に表示されている時刻は十七時を過ぎていた。
「っやば!!」
最近疲れていたせいでついつい寝すぎてしまった。
急がなければ今日の“予定”に間に合わない。
保健室のベッドから飛び起きようとすると、自分の右手に違和感を感じる。
「は……?」
「ん〜…泉澄ぃ……」
違和感の先を辿ると、そこには滉大がオレの手を大事そうに両手で掴んで眠っていた。
このオレが、人の気配に気付かなかった…だと…?
此奴も此奴で無防備すぎるだろ。
学校では完璧に演じてるとはいえ、お前の隣に居るのは、お前が大事そうに掴んでるその手で、もう人を数えきれないほど殺めてる殺人鬼なんだよ。
「もしかしてずっと傍に……」
オレは保健室のベッドに横になった瞬間から記憶が無い。
なら、その可能性は充分ある。
兎に角今は此奴の手を振り払ってでも行かなきゃいけない所がある。
手に力を入れてそっと引き抜くと、今度は凄い力で抱き寄せられ、反動でまたベッドに戻されてしまう。
「うわっ!」
「い、かないで…傍に……」
それだけ言うと、滉大はまたスー…スー……と寝息をたてて眠りにつく。
普段は皆に囲まれて居るから、寂しいという感情は此奴には無いだろうと思っていたが、違うみたいだ。
どっちにしろ引き剥がせないのなら従うしかない。
自然と滉大の嫌になる程整った寝顔が目に入り、ズルいと思うのは、恵まれない者のただの嫉妬だ。
「なんなんだよ…お前……ほんと、うざ…。」
あと五分だけ、五分したら知らねぇからな。
それまで仕方無いから付き合ってやる。
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