第一章・・・十六歳の殺人鬼。

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あの後、オレはきっかり五分で滉大の腕の中から逃れ、なんとか予定に間に合い、ちゃんと始末してあげた。 今回は暗殺の為、どうしてもお気に入りの銃は使えず、仕方無く仕込んでいたナイフで相手の頸動脈をぶっ刺した。 が、当然距離が近い分強い力で抵抗されてしまった為、中々綺麗にトドメが刺せず、気持ちの良い殺人にはならなかった。 「やっぱり、ナイフよりチャカの方がしっくりくるんだよな〜。毎度洗うの面倒いし。 それに…ナイフはお兄さんがくれた物じゃないし。」 洗い終わったナイフを仕舞うと、白い翼の刻印に手を触れ、寂しい気持ちが募る。 「会いたいよ…お兄さん。」 “お兄さん”とは… 幼い頃、オレの両親を殺してくれた、オレの殺人鬼としての師匠である。 素性は何も知らない。 名前すらも知らない。 でも、オレはあの光景を“美しい”と思ってしまった。 両親が悲鳴を上げながらその血が宙を舞い、月夜の灯りで照らされる、『俺は…この時をずっと待ってた。』と笑ったお兄さんの狂気の表情。 哀しい筈なのに、怖い筈なのに、その時オレもお兄さんと同じ表情をしていた。 異常…だろうか。 そうだろう。 きっとその感情が、普通なんだ。 オレは、最初からもうとっくに普通なんかじゃなかった。 だって仕方無いだろう? あの人達は“殺されて当然の人”だったのだから。 救えない命にお情けなんてかけてたまるか。 所詮オレは、あの人達にとっての操り人形でしかなかったのだから。 だからオレはあの時、『お前も一緒に来るか?』と両親の血で濡れた、差し出された手をとった。
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