2

6/43
前へ
/78ページ
次へ
「あ、すみません。……これ、あなたが?」 「……。」 私の問い掛けに、何も言わず困った顔のままポリポリと頭をかいた。 「聴かせてください!」 「それは、無理です。まだ途中なんで。」 「じゃ、じゃあ途中まででも!」 何をそんな必死にお願いしているのか。 自分でも初対面の人におかしな事を言ってるのは承知だ。 それでも、このなぐり書きの歌詞がまるで今の私を表しているかのようで。 私の背中を押してくれているようで。 お願いせずにはいられなかった。 「……んー。では、明日なら。帰って、もう少し修正しようと思っていたので。」 「ほんとですか!?」 「はい。では、同じ時間に、ここで。」 「わかりました!ありがとうございます!」 頭を深く下げると、紙を男性へ返す。 男性はそれを受け取ると、ぺこりとお辞儀をして、去っていった。 ……明日、同じ時間に。 「あ、豆腐!」 我に返った私は、急ぎ足でスーパーへと向かった。 .
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加