2

12/43
前へ
/78ページ
次へ
**** 「……ここは?」 やがて着いた先は、小さなスタジオ。 古びた感じだが、こんなスタジオが実家の近くにあるなんて知らなかった。 「いつも練習に使ってるスタジオです。いつもはバンド仲間と来るんですが。」 ……バンド仲間。 どうやらロックバンドを組んでいるらしい。 歌ってくれるのだから、この男性がヴォーカルなのだろうか。 初めてのスタジオの雰囲気に、ドキドキが増していく。 中に入ると、受付のような所に、ニット帽を被った若いお兄さんが出迎えてくれた。 「年末ギリギリまで練習?精出すねー、(あきら)ー。」 「いや、練習じゃなくて。ちょっと30分程だけ貸してほしいんや。」 ……明。 彼の名前だろう。 名前すら聞いてなかった私は、頭に刻み込むように名前を頭で反芻させた。 「……ほう。へぇ。女か?……こんばんはー、いらっしゃい。」 最後の言葉は私に向けられたものだ。 ニッコリ笑ってくれたお兄さんに、ぺこりと頭を下げた。 .
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加