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ぼすっ。
早足で家に帰ると、コートを脱ぐこともせずベッドにダイブする。
そのまま、ぎゅーっと布団を握り締めて、顔を埋めた。
……なんだ。なんだ……なんだ、そっか。
心が悲鳴を上げているのに、涙は出ない。
思いっきり泣くことが出来たら、もう少し楽なのかもしれない。
それでも、それすらもさせてくれない。
先程の光景がまた頭に浮かび上がってくる。
何とも言えない気持ちは、私の中でモヤモヤモヤモヤと渦を巻くように黒く染まっていく。
……もう、疲れた。
彼は戻ってこない。
もう好きだった彼はいない。
「あー!もう!」
吐き出せない気持ちを、無理やり吐き出すかのように1人で叫ぶも、虚しく消えていった。
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