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「百合香、その卵焼きちょうだい。」 「ん?いいけど。珍しいねー、二葉がそんな事言うなんて。」 「幸せ、分けてもらおうと思って。」 「なんじゃそりゃ。」 キレイに巻かれた卵焼きを1つ貰うと、パクリと一口で食べる。 程よい味の出汁巻き。 すごく家庭的な味で、どこか懐かしくて。 「すっごい美味しい!」 「そう?なら良かった。」 「決めた。今年は実家に帰ってみよう。」 「どうしたの?急に。」 「卵焼きが美味しかったから!」 上京してきて10年。 最後に帰ったのは多分……4年前。 仲が悪い訳じゃない。 定期的に連絡は取り合ってるし、たまに野菜とか送ってきてくれる。 帰らなかったのは、ただ単にめんどくさかったから。 貰った卵焼きがあまりにお母さんが作る味にも似ていて、久しぶりに会いたくなった。 実家は田舎だけど、今はその方が心も癒せるかもしれない。 ……帰ろう。 その決断が、私の人生を変える。 .
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