4人が本棚に入れています
本棚に追加
episode.1
「うん、莉子(りこ)ちゃん。だいぶ調子がいいね。」
「ありがとうございます、神凪(かんなぎ)せんせい。」
「じゃあ、また1ヶ月後に来てね。」
「はい。」
ガララッ
「えぇと、手すりは...」
東京都大成病院。(たいせい)
私は、月に1回、この病院で検査してもらっている。
私は、琴梨莉子(ことなしりこ)。
生まれつき、「目」が見えない。
だから、こうして今、必死に手すりを探している。
「...大丈夫ってこないだ先生に言ったけど...やっぱり手伝ってもらおう...」
私は、少し前にいた診察室に行った。
ガララッ
「ん?莉子ちゃん。どうしたの?」
この方は、私の主治医の神凪亜衣(かんなぎあい)先生。
まだ、24歳なのにもう医者だ。
「あのぉ、やっぱり手伝ってもらってもいいですか...?」
「あぁ、手伝ってほしかったのね。いいわよ、手伝うわ。」
この通り、とってもいい先生。
「ここに手すりがあるわ。」
「、、ありがとうございます。」
神凪先生に手伝ってもらい、やっと外に来れた。
外は、点字ブロックがあるので大丈夫だ。
「ありがとうございました、神凪先生。」
「全然いいのよ!頼ってほしい時はいつでも言いなさい。」
「では、また1ヶ月後に来ます。」
「うん、じゃあね」
「さようなら。」
カツカツカツ...
私は点字ブロックを歩く時は、この白杖(はくじょう)を使う。
これがないと、歩けもしない。
たまーに、点字ブロックの上に座ってる人がいる。
その時はほんとに困る。
しかし。その日は誰も座っていなかった。
しかし、家に帰る途中、点字ブロックの上を歩いていた「普通」のおじさんとぶつかった。
おじさんはすぐにどこかへ行った。
しかし、一方の私は倒れそうになっていた。
でも、すぐに倒れる体が止まった。
−だれかに体を掴まれてる。
瞬間的にそう思った。
私は意を決して、後ろを見た。
最初のコメントを投稿しよう!