1章 異世界にやって来ちゃった

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「まず、私はケディって言う名前ホヤ。以後お見知り置きホヤ」 「……うむ」  もうツッコまない。ツッコんだら負けだ。心を無にして話を聞こうじゃないか。 「私、一族の中でも群を抜いて凄い魔法使いホヤ。でも凄すぎて、家から追放されちゃったホヤ」  まほうつかい。魔法使い。マジシャン。magician。うん、そうか。ここはちゃんと異世界なんだな。魔法使いが存在しているなんて、テンプレをしっかり押さえているじゃないか。偉い偉い。  めっちゃ簡単な説明ではあったが、彼女の事情は何となく分かったし、ある程度深い部分まで予測が出来た。彼女の力を恐れるなり妬むなりした家族が、それっぽい適当な理由を付けて追放したのだろう。 「なあ。凄いってどのくらい凄いんだ?」 「取り敢えず属性と言う属性は全部扱えるホヤ。例えばほら、こんな感じで火を起こしたり。雷を落とせたり……」  何の前動作もなく、掌に小さな炎を出したケディ。更にとても小さいながら、雷をその場に1発チュドンと落としやがった。すっげえ。  聞けば、彼女は他にも様々な物体を出せるらしい。水とか氷とか。それに土とか金とか。無機物は大概出せるようだ。  身も蓋も無い話ではあるが、あの戦場に彼女が居たとしたら。俺たちの乗るセンチュは撃破どころか無傷だったに違いない。 「後は時間も操れるホヤ。老化も若返りも。何なら永久停止もお手の物ホヤ。あ、そうそう。頑張ればワープも出来ちゃうホヤね」 「お前凄すぎるわ。そりゃ家族が怖がるわな」 「でも一文無しで放り出されちゃったホヤ。これからどうしよう……」  彼女に頼みさえすれば、簡単に不老不死になれてしまうかもしれない。敵の拠点に余裕綽々で侵入も出来るかもしれない。おっそろしいし、とんでもない力だ。世界の理を難なく壊せてしまうだろう。  と、ここまで話を聞いた俺に1つの妙案が浮かんだ。 「それなら俺たちと一緒に行かないか? お前がさっき飲んでた奴の素晴らしさを世に広めるために旅をしてるんだが、お前が同行してくれたら俺としてはとってもありがたい」 「あの飲み物めっちゃ美味しかったホヤぁ。確かにあれの素晴らしさ、世に広げるべきホヤね! よーし、それならご馳走してくれたお礼も兼ねて、私もお手伝いするホヤ!」  勝った。旅する理由はたった今、めっちゃ雑に考えてみたのだがな。うん、これを今後の行動動機にしても良いな。我ながら上手い事を考えた。 「頑張るホヤぁ!」とピョンピョンしてるケディ。若干呆れたような様子で俺を見て(?)いるセンチュ。  頼もしい仲間を加えられたようだ。これからの旅に不安しかなかった俺だが、幾つかの光が筋になって現れた。そんな気がした。
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