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襲い掛かる負の情動にレオドーネは悲嘆する。
孤立感に耐え切れなくなった結果、自分の首元に迷いなく刃を当てた。
彼も既に相当な量の力を吸収しており、
あと一箇所でも負傷すれば、いつ消滅してもおかしくなかった。
しめやかに目を瞑り、いざ生命の弦を切り裂く。
「レオドーネ!」
自決に待ったを掛ける嗄れ声が一直線に届いた。
訴えの主は長老。つい先ほどまで他の村人の救助に当たっており、
それが一段落して急いで駆け付けてきたのだ。
「めげるな。得体の知れない力にこれ以上身体を委ねるな。
傷は本来、自然に治癒するもの。
村も儂たち人間の力だけで蘇らせようではないか」
レオドーネはハッとした。ロクセルンを諭した彼も、
無意識に超再生領域を頼りにしていたのであった。
気が付けば、仲間の兵士たちが目の前に並んでいる。
彼らは急遽隣村に停戦を申し込み、一時軍を引き上げていた。
「レオドーネ、一から頑張ろう! 俺たちも協力するから」
生死の境に立たされた青年は俯くことで、猛り狂う情念を必死に抑えようとする。
落ち着け。そう何度も自分に言い聞かせた。
同胞の想いが不安定な地盤を堅牢に支える。
程なくして心の水平線がなだらかになると、
彼は悲壮感の重圧を押し退け、したたかに顔を上げた。
「みんな、ありがとう。自分たちの手で復活させてこそだよな」
英雄は腹を括り、神秘に背を向ける。
行く先では、大勢の村人が手を広げて彼を待っていた。
希望の欠片を拾い上げ、レオドーネは超再生領域に潔く別れを告げる。
自ら創り上げる未来を想像し奮い立つ一行は、
永遠にその場を後にするのだった。
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