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レオドーネは思いがけず生じた隙を見て、
ロクセルンの心臓を真正面から突き刺す。
鮮血が少量零れたが、それも即時に剣が刺さったまま回復した。
「そろそろ止めを刺すか。塵となって消えな」
「待て」
青炎を手に灯し振りかぶったロクセルンをレオドーネが引き留める。
「何だ……?」
全てを見通した瞳が慢心を達観して貫く。
「お前は知らないだろ。超再生領域の真実を」
流れる汗に踏みにじられるレオドーネの口が、敵愾心から徐に開いた。
超再生領域は元々、公に開放されていた。
遍く村人が傷を負えばここへ来て治し、活力を得た。
けれどもある日、利用者の一人に異変が起こる。
彼が超再生領域でいつも通り回復したところ、
身体が突然空中分解してしまったのだ。
原因は、体内に充満した神気が許容量を超過したことにあった。
超再生領域の効能が甚く強力であるが故に、
耐え切れなくなった人間の細胞は破裂の一途を辿る。
木っ端微塵になってしまっては、いくら超再生領域と言えども手に負えない。
人々は同じ過ちを恐れ、間もなく超再生領域は村人たちの意思で封鎖された。
「この剣を引き抜いた瞬間、お前は散る!」
「……嘘だ。そんな馬鹿な!」
復活現場しか目撃していなかったロクセルンが真実を知る由もない。
彼は急に取り乱した。狂気を帯びていた目は焦点が定まらず、頻りに泳いでいる。
「力に溺れてはいけない。安々と利益を得られるわけがないんだ」
剣を握る右手が震える。運命を司るレオドーネの眼は非情にも冷たかった。
「何事にも代償がある。死んで償え」
すらりと剣が引き抜かれる。憤る彼は一切躊躇う素振りを見せなかった。
「ぐわあぁぁぁ!」
悲鳴が村中に響き渡る前に、ロクセルンの姿は消え失せた。
彼を倒したとしても村は元に戻らない。
簡単には癒えない虚しさだけが戦場に永く取り残されていた。
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